アーサー王、精霊を呼びました
忙しくて、かなり短くなってしまいました。すみません。
ですが、どんなに忙しくても、1日1話更新しますので、それで許してください(⌒-⌒; )
太陽が登り始め、少し暖かくなってくる頃。
金糸のような綺麗な髪をなびかせながら、アリサは外で本を読んでいた。
本の題名は、魔法大全。
全ての魔法の行使の仕方や必要な適性属性など、魔法についてが書いてある本だ。
剣についてはアリサの右に出る者はいないにしても、魔法が無い世界からきたアリサにとって、まさに未知の領域であった。
さらに、精霊王の加護を受けているためか、神気という魔力の上位互換を持っている。神気は全属性の適性を持っているため、元々持っている剣技に加え、全ての魔法が使えるというチートができるのだ。
しかし、使い方を知らねば宝の持ち腐れになってしまう。その為マリアの部屋にあったこの本を読んでいるのだ。
ふと目に付いた呪文を詠唱してみる。
「水の精霊よ、地に恵みを与え給え!恵みの雨!」
この言葉を言い放つと、神気が体を巡り、体から蒸発するように抜けていくのがわかった。
直後、ぽつぽつと雨が降ってきた。
「ほほう、これが魔法というものか」
心なしか浮つくアリサ。マリアとの稽古では、魔力を操ることしかやっていない為、魔法を使ったことがなかったのだ。確かに、制御できていない時点で魔法を使い、暴走してしまったら危険である。なので、マリアのやっていることに対して反対はしていない。
しかし、そういうこと(. . . . . .)に対して、抜群のセンスを発揮するアリサにとって、一回の講義で全てを理解してしまったのだ。
そして現在魔法の練習を自分で練習しているのだが、ここでとんでも無いことに気づいてしまった。
「詠唱はお願いする精霊の後にやってほしいことを述べる。その後に魔力を渡すだけってことは…」
そこから考え、演算し、一つの答えにたどり着いた。
「もしかして、精霊を呼び出すことができるんじゃないか?」
精霊を呼ぶ詠唱は、この世界には存在していない。あったとしても、人間より遥かに上位の存在を呼び出す為の魔力(対価)を保有する人間がいないのだ。
アリサがやろうとしていることは、世界を変えることだった。
目を瞑り、体に神気を巡回させる。
余すことなく巡った神気を確認し、右手をまえに出し、詠唱する。
「精霊よ、我が問いに答え姿を現せ!精霊召喚!」
数秒経っても何も起きなかった。
失敗かと諦めかけたその時、神気がごっそり抜けた感覚がアリサを襲った。
不意のことで倒れそうになったが、ギリギリのところで耐えた。普通なら倒れていたであろうが、アーサー王としてのプライドがそれを許さなかった。しかし、5歳の体は言うことを聞いてくれず、それ以上動くことができなくなってしまった。
「あら、大丈夫かしら?私の魔力を少しあげるわ」
アリサを見下ろしているのか、上から声が聞こえた。
そして、アリサの体を黄色く光り輝く魔力が包んだ。
「ありがとうございます。貴女はもしかして、精霊様ですか?」
貰った魔力により魔力欠乏症が治ったアリサは、目の前にいる人物に問いかけた。
「そうよ?私は貴方に呼ばれてやってきた、光の精霊王アルカディアよ」
「そうですか。だからあんなに神気を取られたのですね。」
「そもそも、精霊呼べる時点で貴女は可笑しいけどね?」
苦笑いしながら、顎に手を当て何やら考え事をしているアリサを見た。
「それで?私を呼んだ理由は?」
「いいえ、特に理由は無いのですが。」
「え?何それ?」
「あっ、強いて言えば、私と契約してほしいですね」
その言葉にアルカディアは絶句した。
精霊王である自分が、遥かに格下である人間の子供と契約しろと言われたのだ。契約したら精霊の力を自由に使えるようになり、何時でも呼び出すことができるようになる。要するに、奴隷になれと言われているのだ。
初対面で、さらに格下である者にいきなり奴隷になれと言われたらどんな感情が起こるか。
それは怒りであった。
「あのさ、確かに貴女は神気持ちだろうけど、私と貴女では雲泥の差。魔物と赤子ぐらいの差があるのよ?」
アルカディアは頬をヒクつかせながら、必死に怒りを抑える。
「そうですね。確かに私と貴女(...)では雲泥の差があります。だから、これはお願いといいますか、命令ですね」
「なっ!?」
アリサの一言により、とうとう堪忍の帯が切れた。
「言わせておけば!精霊王に対して命令できると思うなよ人間!!」
アルカディアの魔力がどんどん高まっていく。
しかし、それを物ともしないアリサを見て、さらにましていく。
精霊王の本気の一撃をうけるアリサは、周りから見たら絶体絶命のピンチだと言えるだろう。しかし、その考えはすぐに変わるのであった。
「換装、エクスカリバー」
「消え去るがいい!聖なる咆哮!」
音を凌駕する速さで迫り来る、光り輝く一本の線。
美しく綺麗だが、触れれば切り裂かれてしまいそうだ。
そんなアルカディアの魔法は、アリサの剣によって真っ二つにされた。
「ど、どういうこと!?」
驚きに染まるアルカディア。
それもそのはず。今までの彼女の攻撃を受け止めることのできた人間などいないのだから。ましてや、防いだ相手が子供なのだ。アルカディアのプライドを壊すのには持ってこいの人材だった。
「私の命令を無視するのであれば、ここで切り捨てても構わないのですが」
その言葉と同時に、神気を乗せた殺気を放った。
「っ!?」
あまりの威圧に、精霊王のアルカディアですら息を飲んでしまった。
「わ、わかったわよ。ちっ。ウィンディーネの言ってた通りだったわ。まさか人間に圧倒されるとは。流石は伝説の王様だわ」
「お褒めに預かり光栄です」
「今日からよろしくね。アーサー王」
「この世界ではアリサでお願いします」
「なら私はアルって呼んで頂戴」
ふと過る見慣れた顔。
「すみません。お父様と呼び方が被ってしまうので、ディアと呼ばせて頂きますね」
「あら、そうなの?ならそれでもいいわ」
こうして、伝説の王と精霊王の新たなる生活が始まった