アーサー王、成長してます
この世に生まれたから半年が経った。
この頃になると、この世界の言葉を覚えたり、立つことも可能になった。かなり早い気がするが、これもオプションとやらのお陰だろうと思うことにした。しかし、まだ一歳にすらなっていない赤ん坊が、立ったり、喋ったりするのは不気味なので、そこらへんは自重するようにしている。
この世界でのアーサー王の名前は、アリサ・ベネルートリアというらしい。そして、父親はアルドラート・ベネルートリア。母親はマリア・ベネルートリアという。
家柄はかなりよく、伯爵家である。つまり、貴族なのだ。しかし、両親はかなりアリサに甘く、マリアは仕事の時以外は全ての時間アリサと一緒にいる。
アル(/アルドラートの愛称)は疲れて帰ってくると、直ぐに二人の元へやってくるのだ。
それ程親バカな二人なのだが、年齢は18歳。この歳で伯爵家の当主なのだから、実力は確かなのだろう。
アリサが起きると、メイドたちが忙しなく働いていた。
休憩中のメイドの話を聞くと、どうやらアルの両親がやってくるそうだ。
初めて会うお祖父さんとお祖母さんを思い浮かべながら、はいはいでマリアの元へ向かった。
一時間後、家のベルが鳴った。
あらかじめ玄関に待機していたマリアと、アルが玄関を開けた。
「お久しぶりです、お義母様、お義父様。」
アリサを抱いたマリアがあいさつをする。
「お久しぶりね、マリアちゃん。あら?そちらがアリサちゃんかしら?」
「はい。そうでございます。この話は中でしませんか?」
「そうね。そうしましょう」
そう言って客間に移ることになった。
「改めて、久しぶりです。お母さんにお父さん」
「健康でいてくれてなによりだよ、二人とも」
「ありがとう。貴女たちも元気そうで何よりよ。それに、アリサちゃんもすごく可愛いし、もう満足だわ」
そう言いながらマリアからアリサを受け取り、椅子に腰掛けた。
そこから話し続け、お互いの情報を交換し合っていた。
因みに、その間アリサは寝たふりをして話の内容に耳を傾けていた。
しかし、そこからの収穫はなく、途中からは寝ることにした。
数年後、アリサは5歳になった。
今日から、魔法や算術、文字などを習うことになった。算術や、文学は、既にできるため、マリアに言って魔法や剣術の稽古にしてもらった。
そして今、魔法の稽古をしているところである。
「アリサ、まずは魔力を感じることから始めます」
「はい。お母様。」
「まずは、体の中にある魔力を感じてみなさい」
「はい。」
マリアに言われた通り、体の中の違和感を探ってみる。
……あった。…ん?なんだこれは?
その違和感は直ぐに見つかった。
最強の王は自分の体の全てを極めた。なので、もともとなかったものを探すくらいのことは朝飯前なのだ。それと同時になにか懐かしい感じのものもあった。それは後で確認するとして、今は魔力と思われるものを出してみる。
「お母様、これですか?」
そう言って手の平を持ち上げ、異物(..)を出した。
そこには淡く光る玉があった。それを見たマリアは唖然とした。
「…!?あ、アリサ…それは!?」
予想外のマリアの反応に、今度はアリサが驚いた。
「え?なにか問題でもあるのですか?」
「…白く光る魔力…それは、神気と呼ばれるものよ。」
「なんでしょうかそれは?」
「えっとね、性質的には魔力と変わらないの。でもね、魔力は適性属性によって色が変わるの。例えば、火属性なら真っ赤に、光属性なら黄色く光るのよ。」
「この世にある属性ですよね?」
「そう、火属性、水属性、土属性、風属性、闇属性、光属性。この6属性なんだけど、神気というのは、これら全てが使えるのよ。」
その言葉に、ふと思い出した。
〜「そうねー。何もかもが普通の人間の3倍になるとか、魔法の適性が全属性とか、私の加護がついたりするわね」〜
なるほど、そういうことだったのかと、アリサは思った。
そして、マリアの話は続く。
「でもね、普通の全属性適性は珍しいんだけど、1000万人に1人ぐらいはいるの。ただ、全属性の精霊に好かれればいいだけだしね。」
「それだけでもすごい気がするのですが。」
「確かに凄いのだけど、貴女のはもっと凄いのよ?」
「そうなのですか?」
「そうよ!魔力と違って、余計なものを含まない神気は、同じ力だけ込めた同じ魔法の威力は10倍も違うんだから!それに、10世紀に1人いれば凄いぐらいに神気持ちの人間は凄いのよ?」
「で、でも、それだけ凄いと逆に危ないのでは?」
確かに凄いだろうが、アリサはまだ5歳。アーサー王時代の記憶、技術を持っていようが、肉体は所詮5歳なのだ。
その力を悪用しようと言う連中が現れるかもしれない。
しかし、それをマリアは否定する。
「少なくとも貴女が私たちの元にいる時は安全よ」
「何故でしょうか?」
「私たちは伯爵っていう地位を持っているわ。王様の次に偉い地位ね」
「はい。私はそんなお母様、お父様を、誇りに思います。」
「うん、ありがとう。それでね、この国には裏で悪意を働く貴族なんていないし、いたとしても、王様に隠し事はできないのよ。」
「何故でしょうか?確かに凄い王様でも、万人に好かれるとは限らないと思うのですが。」
この言葉は自分が王だった頃の記憶があるからこその言葉だったのだが、マリアの知るところではなかった。
「そうね、けど私たちの王様は違うのよ。私たちの王様は伝説の英雄フェリオリス様だから」
伝説の英雄フェリオリスとは、この世界では物語にも出てくる英雄である。万人を救い、万人を率いてきたと言われている。
確かに、そんな有名な王なら支持されているのも理解できる。
「だから、貴女が心配することはないのよ?ここの貴族は王様に恩義を感じているから、貴女の力を見ても人並みに驚くぐらいじゃないかしら?それに、貴女は冒険者になりたいのでは?」
「ばれてましたか。」
「私を誰だと思っているの?貴女の母親よ?」
「反対しないのですか?」
「少し悲しいけど、貴女の力は冒険者でこそ輝くと思うもの。それに、アルだって反対はしないわ」
「ありがとうございます。それでは、死なないように強くならねばなりませんね」
そう言って、神気を身体中に巡らせる。
「これからゆっくりやっていけばいいのよ。大体、普通なら15歳から魔法を学ぶのだから、貴女は早すぎるのだから」
と言いつつも付き合ってくれたマリアはかなりアリサに期待しているようだった。