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プロローグ

 


「・・・・・・やはり、考えは変わらないのですね」


 花々に囲まれている女性は、騎士に背を向けながら明るい声で言った。

 女は男に振り向くと、少し困った様に微笑んだ。


「・・・・・・どんなに時が経ようとも、我が貴方への想い、悠久に変わりはしませぬ。何度も転生を繰り返してでも、我は貴方の御傍に居続ける事を誓います。我最愛の愛しき人・・・・・・ゼルエル」


 男は女の足元に跪き、その手を取り口付けをした。


「・・・・・・私も、貴方への想い、忘れはしません。・・・・・・私も、この先ずっと貴方の傍に居続ける事を誓います。ネウジ様・・・・・・」


 そう言った女の顔からは笑みは消え、瞳からは、一滴の涙が零れた。きっともう会えないと分かってしまった最愛の者に向けての涙だった。


「いつか必ず、貴方を迎えに行きます。それまで待たせるかもしれませんが、私の事を待っていて下さい」

「・・・・・・私は、貴方が来ると信じ、待ち続けます。どんなに時間が経っても、待ち続けます。なので、必ず、必ず迎えに来て下さいね・・・・・・」


 女は、もう会えないと分かっていても、この無意味な約束をせずにはいられなかった。

 いつの間にか、女の瞳からは涙が止まることなく溢れ出ていた。

 男は立ち上がり、そっと女を抱き締めた。


「私を信じて、諦めず、待っていて下さい・・・・・・」


 女はただ涙を流しながら男を抱き締め返す事しか出来なかった。

 暫くすると、男は女を名残惜しそうに離し、女に優しく微笑んだ。女も、まだ少し泣きながらも男に微笑み返した。

 それから男は懐から少し刀身の長めのナイフを取り出し、迷う事なく自分の胸に突き刺した。

 男は胸元から血を流しながら、どさりと女の足元に倒れこんだ。

 女は地面に両膝を付け、男の血に染まった手を両手でそっと握った。

 男は息も絶え絶えになりながらも女に言った。


「・・・・・・ゼル、エル、っ! 必ず、必ずまたッ・・・・・・・・・!」

「・・・・・・分かっています。何時までも、何時までも待ち続けます。ですから・・・・・・必ず私の前にまた姿を見せて下さい・・・・・・!」


 女は男の顔に涙を落としながら言った。そしてぎゅっと、男の手を握る力を強める。


「・・・・・・我が最愛の人・・・・・・ゼルエル・・・・・・貴方に会えて、本当に・・・・・・良かったっ・・・・・・!」


 男はその言葉を最後に、ついには動かなくなってしまった。

 女は、こうなる事は分かっていたが、さらに涙を流した。


「・・・・・・会えないと、分かっています。生まれ変わって、再び巡り合うなど、無理な事です。けど、私は貴方の為に何度でも生まれ変わり、貴方を・・・・・・ネウジ様を待ち続けます・・・・・・」


 もう動く事のない男に、二度目の約束をして、女性はその場から離れた―――





これは


遠い遠い昔に交わされた


生命の女神の子と謳われた少女と


希望を司る騎士と呼ばれた青年の


泡沫の約束―――



 

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