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 父親が元心腐病患者だった柳瀬の母は、裕福な家庭で育ち、気品も才覚も兼ね備えていたが、親が元心腐病患者というだけで、結婚相手が中々決まらなかった。両親からは『早く子供を産め』と急かされ、周囲の人からは『ムシ』と罵られ、結局彼女は貧しい家庭で育ち、優しい性格だけが取得の柳瀬の父と結婚することになる。そんな苦労話を持つ柳瀬の母は、彼が幼い頃から心腐病がどんな病気なのか、彼の父と共に、徹底的に息子に教え込んだ。

『心腐病の人には絶対触っちゃいけないんだよ。わかった?』

『どうして?どうして触っちゃいけないの?』

『心腐病の人に触ると、感情が吸い取られてしまうんだよ。感情が吸い取られた後は、何も考えられなくなる。そうなったら怖いだろ?』

『うん、怖い。でも心腐病の人はみんな病院にいるんじゃないの?』

『それが、そうでもないんだ。自分の子どもが心腐病だと信じたくなくて、子どもが心腐病なのに国に教えない親が多いんだよ』

『え?でも心腐病の人は泣いたりしないんでしょ?生まれた時にわかると思うけど……』

『そうだな。かずあきの言う通りだ。でもな、かずあきもそうだったんだが、家はよくテレビで放送されているような、病院で助産師に取り上げてもらった訳ではないんだ。この家でかずあきは生まれたんだよ』

『もし、僕が心腐病を発症していたら、お父さんとお母さんはどうしてたの?うつっちゃってたかもしれないんだよ?死んじゃってたかもしれないんだよ?』

『移ってたとしても気にしないよ。そんなこと、かずあきの命と比べたら、取るに足らないことなのよ』

 幼い彼は聡明だった。両親に聞かされたことを理解し、受け入れた。しかし、やはりというべきか、彼はまだ子どもだった。どうして心腐病を発症していない自分たちまでもが世間に差別されるのかは彼にはわからなかった。

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