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第三話

 その頃、サムは街を流れる川沿いの道を歩いていた。サムの上空にはカラスが気流に乗って気持ち良さそうに飛んでいる。しばらく行くと、大きな太鼓橋が架かっていた。サムのお気に入りの場所だった。

 サムは持ってきた小枝の束を橋の隅に置き、その中から二本の枝を手に取った。

(どっちが勝つかな?)

 サムがいつも遊んでいる小枝のレースだ。橋の片方から同時に二本の小枝を落とすと、急いでもう片方の欄干から川を覗き込む。

しばらくすると、川の流れに乗って小枝が現れる。二つの小枝は、ほぼ同時に到着した。

(引き分けだ。もう一回やろう!)

 サムは息を切らせながら、もう一度反対側に走って行った。また小枝の束から二つを選び川に落とそうとした時、サムの足に何かが触れた。足元を見下ろすと、小さな子猫がサムの足を手でつついていた。子猫は鳴いていたが、鳴き声はサムには聞こえない。

 子猫は次に小枝の束をつつくと、枝をかじった。

(お腹がすいてるの?)

 サムはかがんで子猫を見つめた。と、急に子猫は上空を見上げて鳴いたかと思うと、一目散に走り出した。空を見ると、カラスがサムの元に下りてこようとしていた。

(あれは僕の友達のカラス君だよ!)

 サムは子猫を追いかけた。子猫は橋を通り抜け、川沿いの道を走り続けた。小さいがとてもすばしこい。サムはやっとの思いで追いかけた。

「まって!あぶないよ!」

 サムは声に出して叫ぶが、子猫には通じない。道を歩く人々の間をぬって駆けていくと、反対側から速度を上げた馬車が走って来た。

「あぶない!」

 馬車にひかれそうになる子猫を見て叫ぶ。子猫はかろうじて馬車の車輪をよけたが、よけた弾みに勢いあまって川に落ちていった。サムが立ち止まって川を覗くと、子猫はもがきながら川の流れに飲まれていた。

「こねこちゃん!」

 見る見る流されていく子猫を見て、サムは考える間もなく川に飛び込んでいた。川が深く流れが早いことは頭になかった。流されながらも、サムは必死に泳いで子猫を捕まえた。 もがく子猫をサムはしっかりと抱きしめた。

(良かった!助かった)

 ほっと安心した時、サムは川の深さに気づいた。サムの背では足はつかない。サム自身もどんどん流されていく。沈みそうになる体をどうにか持ち堪え、サムは必死で泳いだ。初めて恐怖が襲ってくる。

「たすけて!!」

 サムは大声で叫んだ。サムの上空では、カラスがカァカァと鳴いていた。

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