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第二十七話

「君は休んでいなさい。そう言ったはずだろう。そんな疲れ切った体では魔法は使えない」

 リシリーは軽くため息をつく。

「全く、無茶なお嬢さんだ」

「私も力になりたいんです。黙って見ているだけなんて出来ない」

「彼女はダメだと言っても聞かないな。たいした力じゃなくても、いないよりはマシかもしれない」

 ダリルは口元を弛める。

「…仕方ない。では、二人ともついてきなさい」

 ダリルに何か言いたげなエリーを遮って、リシリーは足早に歩き始める。その後をついて行こうとしたエリーの腕をダリルは掴んだ。

「何よ?」

 振り返ったエリーに、ダリルは懐から取り出した水晶球を握らせた。

「それを持っていると力が出やすい。僕には必要ないんでね」

 ダリルはそう言って軽くウィンクすると、先に歩いて行く。エリーは水晶球を握りしめ後に続いた。


 城の屋上には、冷たい風が吹き抜けていた。雨はもう止んでいたが、上空の空はどんよりと曇っている。ここからは国中が見渡せた。遠くに連なる山々、遙か彼方の地平線も見える。

 エリーはダリルから渡された水晶球を強く握り、覚えたばかりの治癒の呪文を唱え続けていた。側にはリシリーとダリルも立って、一心に呪文を唱えていた。国中をまわり、一人一人治療している時間はない。国を見下ろす一番高い場所から魔法を唱える方法を、リシリーは選んだ。円形の魔法陣を描いて立ち、三人は心を一つにして 同じ呪文を唱える。

(どうか、どうかこの国に平和が訪れますように、暗い闇に光りが差しますように…)

 エリーの額から汗が流れる。体力の限界はとうに超えていた。延々と続く呪文、気力だけでどうにか立っていた。時折、ダリルがちらちらとエリーに視線を送っていたが、ダリル自身もかなり体力を消耗していた。その横で、リシリーは微動だにせず静かに呪文を唱えている。リシリーの体からは強い魔法の波動が感じられ、その力は弱まることなく発せられていた。

 長い時が流れた。

(もう、ダメ…)

 体中が痺れ、意識がもうろうとしてきた頃、エリーはふと心が軽くなるような感覚を覚えた。安らぎのような温かさが、全身を包む。その直後、空がグルグルと回転し始め、エリーは気を失ってその場に倒れた。

「魔法より大切なものがあることに…」

 遠くの方で微かに声を聞き、誰かの温かい腕の感触を感じ体が持ち上がったような感覚を最後に、エリーの記憶はとぎれた。

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