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第二十六話

 エリーの言葉に、ジョージとリリィは驚く。

「エリー、どういう事?…」

「君は魔法が使えるのかい?…」

 まじまじとエリーを見つめる二人を後目に、エリーは静かに口を開く。

「…私も魔法が使えるわ。まだ、習い始めたばかりだけど、少しだけなら使うことが出来るの。サムの病気は治療の魔法で治せたから」

「お嬢さん、自分の言っていることの意味が分かっているのかね?君も魔法使いということになるのだよ」

 顔色こそ変えていないが、リシリーもエリーの発言に驚かされていた。

「魔法使いと言えるほど、私はまだ魔法を知りません。けれど、魔法を使えるのが魔法使いと言うのなら、私も魔法使いの一人です」

 エリーはきっぱりと答え、リシリーを見つめる。

「あなたの魔力があれば心強いですが…あなたが力を貸してくれないのなら、私一人でもやってみます。私はこの国が好きだから、この国を失いたくないです」

「……」

 リシリーはしばらく黙ってエリーを見つめ返す。

「…君一人の力では無理だよ。特に今はひどく疲れているようだ」

「でも」

「しばらくここで休んで待っていなさい。魔法は体力を消耗するものだ」

 リシリーは微かに笑みを浮かべ、静かに部屋を出ていった。

「……」

 エリーは茫然として、リシリーの出ていく様子を見守った。立っているのもやっとなくらい、エリーは疲れ切っていた。

(リシリー様はどうするつもり?私も処刑されるの?…)

 エリーの胸に不安がよぎる。

(でも、その前にやるべき事があるわ)

 ジョージとリリィの呼びとめる声を後ろで聞きながら、エリーも部屋を出ていった。


 ダリルは一人牢屋のベッドに座っていた。二人の牢屋番も病に倒れ、今は誰も警備をする者はいない。ダリルのことは放っておかれるくらい状況は深刻になってきていた。

 ダリルがぼんやりと視線を宙に浮かせていると、靴音を響かせて静かにリシリーが歩いて来た。ダリルは視線をリシリーに向ける。

「警備の手が足りず、あなたが牢屋番をすることになったのか?」

 リシリーは牢屋の正面で立ち止まると、ダリルを見て静かに微笑んだ。そして、ゆっくりと牢屋の鍵を開けた。

「…裁判をすることなしに、僕の処刑を行うつもりなのか?」

「話をせかさずとも良い。今は君の力も必要だ」

「?……」

「さぁ、出なさい、私の気が変わる前に。…残された時間はあまりない」

 不審に思いながらも、ダリルは立ち上がり言われるままに牢を出た。

「エリー?」

 二人の後ろにはエリーが立っていた。

「私の力は比べものにならないくらい小さいかもしれないけど、私も二人の力になります」

 エリーは微笑みを浮かべて答えた。

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