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第二十四話

 どれくらいの時が立ったのだろう?いつしかエリーは魔法の杖を握りしめたまま、サムのベッドにもたれ掛かって眠っていた。

(いけない…寝ちゃってた…)

 ここ数日慌ただしく過ぎていき、ろくに眠っていなかった。眠い目をこすり、サムの顔を覗き込む。サムは規則正しい穏やかな寝息を立てて、ぐっすりと眠っていた。熱も下がっているようだ。

(良かった!…)

 エリーの顔に喜びと安堵の表情が表れる。何度も魔法の呪文を唱えているうちに、途中から段々と心が軽くなっていったような気がした。呪文が唱えやすくなるというか、後押しされるような温かな力を感じていた。それが、ダリルの力だとは気づいていないエリーだが、魔法の力でサムの病を治せたことは、エリーに大きな自信と勇気を与えた。

(魔法が効いた。私にも魔法が使えたわ。叔母さんも治してあげなきゃ)

 勢いよく立ち上がったエリーは、突然激しい目眩に襲われた。クラクラしてその場にしゃがみ込む。ダリルがジョージを治療した時も、ダリルはひどく疲れていたようだった。大きな魔法を使うと、それだけ消耗する力も大きいのかもしれない。エリーはしばらくじっとしたまま、目眩がおさまるのを待った。

(…いきなりは無理よね。でも、時間がないわ…)

 どうにか目眩が静まり窓の外に目を向けると、厚い雲に覆われた空が段々と白み始めていた。と、「ニャー」という声が足元で聞こえた。子猫がエリーにすりより、鳴きながらエリーを見上げている。ベッドの脇にはカラスが静かに止まってエリーを見ていた。

「待ってて、今温かいミルクを持って来るから」

 カラスと子猫の存在は、エリーにとって心強い。少なくとも一人ぼっちではない気がしてきて、幾分元気が出てきた。エリーはゆっくりと立ち上がった。


 エリーが皿とグラスにミルクを入れて部屋に戻ろうとした時、店の扉をドンドンと叩く音がした。

(こんな夜明け前に誰だろう?…)

 扉は何度も叩かれ、何か緊迫した気配を感じた。エリーはミルクを乗せたトレイをテーブルに置くと、急いで扉の鍵を開けた。

「ジョージ、リリィ…?!」

 扉の外にはジョージとリリィの姿があった。二人とも沈痛な表情をしてエリーを見つめている。

「…どうしたの?…」

 また、不吉な影が心に差す。聞かなくとも、悪い知らせであることは間違いない。

「…国王が病気で倒れられた…」

 ジョージは重い口を開いた。

「……」

 エリーの心に差し掛けた希望の光は、再び消えていきそうになる。

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