第二十一話
「ジョージの友人だというお嬢さんですね。どうぞ、おかけ下さい。ゆっくり話を聞きましょう」
リシリーはエリーに椅子を勧めると、ソファに腰を下ろした。
「…あの、今朝叔母が倒れて、すぐに帰らないといけないんです。薬草の煎じ薬を作る時間もありませんでした…」
エリーはソファには座らず、立ったまま答えた。
「それは大変ですね。あなたが作った薬を飲めば、叔母様の具合も良くなるかもしれない」
「……」
(嘘だわ。そんな事思ってもいないくせに…)
エリーは黙ったままリシリーを見つめた。リシリーは表情を崩さず微笑んでいる。
「城の内部でも、流行病が広まってきています。あなたの薬がたくさん必要になりそうですね」
リシリーはそう言うと、ソファから立ち上がった。
「また、この次にでも薬を届けてください。門番にでも渡すといいでしょう」
「……」
「それでは、今日は失礼致します」
軽く一礼して去っていこうとするリシリーを、エリーは悲痛な表情で見つめた。
「…待ってください!それじゃ間に合わない…私の薬では、誰も助からないわ…」
「……」
リシリーは足を止め、振り返った。
「お嬢さんの薬草は、大変良く効くと聞いていましたが?…」
「ダメよ!この病はどんな薬も効かないわ。あなたも分かっているはずでしょう?このままではみんな死んでしまう…」
エリーは崩れそうになる気持ちを必死で抑えた。
「…魔法の力がなければ。魔法の力を借りなければ病気は治らないわ」
「……」
リシリーは黙ったままエリーを見つめた。
「魔法使いダリルの力が必要という訳ですか?」
身体を震わせ、泣きそうな顔をしたエリーに、リシリーは冷ややかな笑みを向けた。
「…はい」
エリーは小さく答える。
「それは無理な願いです。彼はいずれ死刑となる身。この国では魔法は禁止されています」
「お願いします!魔法の力が必要なんです。この国を助けて…」
「魔法を使うことは許されない。これは国王の命令です」
「…この国がなくなっても構わないんですか?あなたは平気なの?あなた一人助かるつもり?」
「お嬢さん、話はもう終わりました。もうお帰りなさい」
リシリーは冷たい目でエリーを見つめる。
「お願い…あなたの力が必要なんです…」
「……」
「ダリルとあなたの力があれば…」
「何を言っている?」
リシリーは恐ろしい目をしてエリーを睨んだ。
「これ以上何か言えば、あなたの命も保障できなくなりますよ」
「……」
リシリーは乱暴に扉を開けると、足早に部屋を出ていった。エリーはリシリーの威厳に圧倒され、もう何も言うことが出来なかった。




