第十四話
(ダリル、あなたの立場はかなり悪い状況にあります。反抗的な態度は慎んだ方が良いと思います。私の力ではどうすることも…)
ジョージはリシリーを気にしながら、ダリルに思いを答えた。と、リシリーが振り向いてジョージを一瞥した。ジョージはビクッとして身体を固くする。
(リシリー様には聞こえないはずでは…?)
ダリルは何も言わず、黙ったままリシリーを見つめていた。
「君たちは知り合いなのかね?」
リシリーは穏やかに、だが視線は鋭く口を開いた。
「いえ…」
ジョージは困惑した表情を浮かべ、口ごもる。
「この国に来て一、二度会っただけだ。その程度でも知り合いというのかな?もちろん、彼は僕が魔法使いであることは知らなかった」
ダリルはリシリーから視線を外さず、落ち着いて答えた。牽制するように飛び交う視線。重い空気が流れる。
と、沈黙を破るように、牢屋に別の足音が響いてきた。 一人の騎士が現れ、リシリーとジョージに会釈した。 ジョージはひとまずほっとする。
「エリーという娘が城の門前に来ております。ジョージ・サンダーソン様に会いたいと申しています」
「エリーが?…」
「君の婚約者という娘かね?」
リシリーは口元を弛める。
「いえ…婚約者の友人です」
「ふむ、結婚までには身辺整理を済ませておいた方が良い。後々面倒なことになるといけないからな」
「そういう関係ではありません」
ジョージの頬が染まるのを見て、リシリーは軽く笑った。
「まあ良い、会いに行ってやりなさい。魔法使い殿の話は、また後で聞くことにしよう」
「はい…」
ジョージはリシリーに一礼すると、呼びに来た騎士と共に去っていった。
(お前のような新米の魔法使いは、考えもなくやたらと魔法を使いたがる。それが身の破滅になることを思い知っておくが良い)
立ち去り際、リシリーはダリルの心に強く語りかけてきた。
「……」
リシリーの後ろ姿を見つめながら、ダリルはフーッと息をついた。




