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はじめてのとうばつ

 俺は冒険者ギルドへと向かった。

 そこにはいつものように、パレットの姿があった。

 ふわふわとした柔らかな金髪に、晴れ渡った空のような澄んだ青い瞳。

 白と淡いブルーを基調としたギルドの制服。

 そんなパレットの姿が今日は輝いて見える。


「なんか光ってる? パレット?」

「何言ってるのカイトさん、まだおかしいね」

「ありゃ、くすんでたか」

「くすんではいねえよ!?」


 どうやらいつも通りのようだ。

 ということは、俺がいい気分なだけだな、ああそうだ。


 さて依頼書を見ていくとしよう……うん……うん……これはナイトキングの皮膜10匹分の納品か、悪くないな。しかし期限があと2日は厳しいか? 会えば倒せるが、そもそも広い山でそこまでエンカウントできるかっていう問題があるからな。


 と依頼書の束をめくっていると、壁に張り出されている紙が目に入った。


『ズウナ山林の大規模討伐 固定報酬銀貨5枚+倒したモンスター数に応じて報酬』


 討伐依頼だ、しかも大規模討伐。

 普通の討伐依頼は個人が依頼を出すものだが――たとえば農園の管理者が、畑を荒らす魔物を倒してほしい、というような――大規模討伐依頼は国が出す依頼だ。

 この場合は国からこのマイリントに派遣されている代官が出している依頼だな。


 ズウナ山林は、町の東にある山の一つで、モンスターも結構いるところだが、依頼の張り紙の詳細を読むと、そこのモンスターが増えすぎたため間引かなければということらしい。


 ……ん?

 なんか、パレットがその澄んだきれいな青い目を細めて眉間にシワを寄せて俺を見ている?


「カイトさん、本気?」

「もちろん」

「モンスターたくさん倒すんだよ?」

「この前倒してきただろ。今の俺はやれるようになったんだよ」

「そんな短期間で変わることある? 何が…………もしかして! 職業が目覚めた!?」

「くっくっく……ご明察だよ察しのいいパレットさん! ついに! 来たんだ」

「うっそー!? そんな年齢で目覚める人なんて初めて聞いたよ!?」

「俺もだ。自分でも驚いたけど、それで一気にやれるようになったってわけ。だから心配しなくて大丈夫、モンスターとも戦える」


 パレットは俺の体を頭から爪先まで何往復も見ているが、見た目は特に変わってないと思うぞ。


「驚いたぁ……けど、おめでとうカイトさん。絶対無理だと思ってたけどさ、ていうか思うだけじゃなく言ってたけどさ。良かったね、本当に…………本当に!」

「ああ、ありがとうパレット。というかお前が涙ぐむのかよ」

「だって……いいでしょ泣いても! 頑張ってた人が報われたんだから!」


 ……本当にありがとうな、 パレット。


「で? それでどんな職業だったの? ここまで引っ張ったんだから、面白いやつじゃないと承知しないからね」

「ああ、それは――」と我慢の言葉を口にしかけて、俺はギルドの中が結構賑わっていることを思い出した。

 依頼の報告をし素材を売りに来ている冒険者や、その査定をしているパレット以外のギルド職員、他にも冒険者や職員が複数今のギルドにはいる。


「人気のあるところだとちょっとな。二人きりの時があったら教えるよ」

「え、もしかして秘密にしておきたい勢? 意外だなあ」

「ようやくだからな、もったいぶりたくなるんだよ」

「いい年なのに子供っぽいこだわりねー。まあ、子供みたいにこだわるタイプじゃなきゃその年まで無職で冒険者続けてなかったか」

「さっきの感動を返してくれないか。ま、そういうことだから心配しなくて大丈夫だ、大規模討伐の成果期待しててくれ」


 俺は大討伐依頼の内容を写して、ギルドをあとにした。




「まあ、あそこで言うのは難しいよな」


 自分の職業のことは、ほとんどの人は明らかにするが、一部は隠す人もいる。それは情報が広まると誰かと戦う時に不利になるからだ。

 とはいえ、普通の冒険者は人間ではなくモンスターと戦うので隠す必要を感じていない。一部の特に用心深い人や、人間と戦う人――盗賊や犯罪を犯した冒険者を狩る人――くらいだ、職業を隠すことがあるのは。


 もちろん、隠していれば他の人とはパーティを組みにくくなるので、そこは良し悪しだ。どういう能力を持っていてどう戦うかわからない人とじゃパーティなんて組めないからな。


 だが俺が隠したのはそういった理由とは違う。

 純粋に「我慢」という職業が珍しいからだ。


 特異な能力を明らかにした者の向かう道は2つある。頭のいい人は、それを自己アピールにうまく使い、権力者に取り入ったり、民衆の支持を集めたりして成り上がれる。頭のよくない人は、権力者に利用されたり、民衆から異端として排斥されたりして、悲惨な末路をたどる。


 俺はもちろん頭のいい方ではないので、この特異な能力を開示したらマイナスの未来になるのは間違いない。

 だったら、隠すのが一番いい。

 用心深いから職業を隠している、というていにしておけば波風が立たないというわけだ。


「頭の出来が良けりゃなあ、これをうまく使ってプラスにできるんだけど、まあ、しかたねえな。安全に穏便に、それで満足しよう」


 次にある大討伐依頼の時もそうするつもりだ。

 職業を開示しないならおそらく一人でやることになるが、まあそこはしかたない。一人で依頼をやるのは慣れている。


「なにはともあれ楽しみだ、初めての討伐!」  

 


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