14.霞が関からの小さな光
選挙から半年後。
霞ヶ関の風景が、少しずつ変わり始めていた。
財務省は、組織の一部を解体。
しかし、政治家と一部の官僚の手によって、新たに「財政庁」が設立されてしまった。
建前は、生活者の声を反映するための審議会となっている。
みなみやユウキ、オタク仲間は財務省事態を失くそうとしていた。
二人はオタクの会のメンバーに対して、申し訳ない気持ちで一杯になっていた。
それでも、今できることとして、補助金制度の透明化と再設計に着手し、小さな一歩を続けていた。
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二人のそんな気持ちに対して、オタクたちも彼らをさらに応援しようと、自分たちができることを続けていた。
「まさか、本当にここまで来るなんてね」
ナナが、特設サイトのアクセス数を見ながらつぶやいた。
「1000万アクセス突破…」
「「「“推し活”って、偉大だな。」」」
メンバーのみんなが画面の中で笑っていた。
現実はまだまだまったく前と変わっていなかった。
実際はほんの一握りの勇気ある政治家が少しづつ協力をしてくれているが、まだまだだった。
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みなみは、弁護士と政治家という二束のわらじをはきながら、今日は議員会館の自室で、次の法案の原稿に目を通していた。
「生活者優先予算編成法案」
みなみに届けられた官僚たちからの挑戦状。
彼らは日本人を家畜かなんかかと思っているの?
予算をつけるくらいなら、最初から取らなきゃいいでしょ。
思わず書類を強く握って、しわくちゃにしてしまった。
いけない。
いやがらせをされ、この法案の件もユウキが方々を駆け回って手に入れてくれた書類だ。
情報を制するものが戦に勝てる。
みなみのご先祖様の言葉だ。
負けないわ。
これから、できることをひとつづつ。
みなみはノックとともに開けられた扉に目を開けた。
「みなみさん。また一人協力してくれる政治家を仲間にできたよ。」
今の制度に逆らう気概のある人物をひとりひとり見つけて、増やしていかなくっちゃ。
財務省の一部を封じ込めただけで、官僚の人数をほんの少しだけ減らせただけ。
ゴキブリのようにしぶとく生き続ける彼らを根こそぎにして、本当の日本人が努力した成果をきちんと受け取れるように」しなくっちゃ。
みなみは、強く心に誓った。
一方、あや子は、静かな朝を迎えていた。
娘の未来は無事、大学に進学し、一週間前には荷物を詰めて、大学近くの寮に行ってしまった。
よくスマホに近況報告が届く。
今は、この自宅にはあや子だけが住んでいる。
健は、あの浮気依頼、会社の近くで寝泊まりしているようだ。
まったく顔を合わせていない。
やっと昨日連絡がとれて、今日これから話し合いに行く予定だ。
あや子は、台所の机の上に広げていたパソコンをシャットダウンするとリュックしまった。
さきほどまでは、自分で描き始めたばかりの漫画の原稿があった。
タイトルは——**『財務省vsオタクたち、税金戦線』**
「まさか、自分がまた書く側に立てるなんてね。」
学生の時、よく仲間たちと赤字になりながらも発行していた同人誌を思い出していた。
赤字だけど楽しかった。
今は、楽しいだけじゃなくて、目的をもって書いている。
オタク仲間が手伝ってくれた構成と背景画。
みなみの演説をもとにしたセリフ。
そして、自分の体験をもとにした主人公の心の声。
みんなが描く無税国家。
あや子のスマホがなって、娘からのメールが届いた。
「ママ、今日の原稿、もうできた。読んでいい?」
「うん。ちょっと恥ずかしいけど、読んで感想くれる?」
「……OKママ。まかしといて、後でイベント情報も共有しようよ。面白いのがあるんだ。」
「ふふ、ありがとう」
あや子は、画面に向かってペンを走らせながら、心の中でつぶやいた。
(これは、私の物語。
そして、誰かの物語になるかもしれない。)
霞の向こうに、朝日が差し込んでいた。




