11.物語が、現実を動かす。
「できたよ。」
ナナが差し出したのは、一冊の同人誌だった。
タイトルは——**『霞の向こうの税金戦線』**
表紙には、スーツ姿の女性が、巨大な霞ヶ関の塔に向かって剣を振り下ろす姿が描かれていた。
モデルはもちろん、みなみ。
その隣には、家計簿を手にしたオタク主婦(手には漫画本)と、ノートPCを抱えたオタク青年たち。
「これ…すごい。」
あや子は、ページをめくりながら目を見張った。
「私たちの物語が、ちゃんと“物語”になってるんだから。」
ナナが偉そうに胸を張る。
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ユウキは、同人誌の内容を元にしたアニメPVを制作した。
BGMは、リョウが作曲したオリジナル。
ナレーションは、某アニメの声優の声ににているため、あや子が担当した。
「霞が関の塔の中で、誰かが笑っているけど、私たちは黙らないわ。
これは、私たち平民の反撃の狼煙よ——」
動画は、SNSで瞬く間に拡散された。
「泣いた」
「これ、現実の話でしょ?」
「フィクションなのにリアルすぎる。」
タグ「#霞の向こう」がトレンド1位を獲得。
YouTubeの急上昇ランキングにも入り、テレビ局も無視できなくなった。
「報道特集、再取材を申し込みたい。」
「今度は、あなたたちの“物語”を中心に構成します。」
「視聴者が、あなたたちの声を求めているんです。」
みなみは、静かにうなずいた。
「やっと、物語が現実を動かし始めたわ。」
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あや子は、居間にあるコタツで勉強疲れで眠っている娘を見つめながら、そっとつぶやいた。
「あなたが働きだすまでに、もっと税金が安くなるように頑張るからね。必ず財務省をぶっ潰してやる。」
あや子は物騒な言葉を吐くと娘の背にそっと毛布をかけた。




