4話 回遊の砂浜 入口
毎週月曜日の朝に更新してます
グルメダンジョン。
それは、端的に言えば食べられるダンジョンである。
床、壁、川、木、生息するモンスターまで、あらゆる物が食用可な物質で構成されている奇妙なダンジョンだ。
また、モンスターからのドロップ品も食材あるいは調理済の料理となっている。
通常ダンジョンにおいても食材と料理はドロップするが、グルメダンジョンで落ちるそれはチェーン店と専門店くらいの違いになる。要は、美味しいのだ。
ここ、回遊の砂浜は名前が示すように海産物が豊富に採れるグルメダンジョンだ。
グルメダンジョンによって肉料理や新鮮野菜、乳製品や缶詰など、それぞれ出現する傾向が異なる。
海産系のグルメダンジョンであれば、主に魚料理、貝料理などがドロップする。
想像してみてほしい。脂が乗った大トロの刺し身に、バターが塗られて壺焼きされた貝、海草のうまみが染み出したあったかいスープ。
戦闘で疲れた冒険者の前にそれが差し出されたら、抗えるだろうか。
戦闘をしてお腹を空かし、ダイエットにもなり、美味しく栄養もある食事が運動後に出てくるとあれば、グルメダンジョンに狂う者が後を絶たないのも無理からぬ話だ。
"美味しい"を求めて、今日もまた冒険者がグルメダンジョンに潜る──。
✜____________✜
「本日も鍛冶日和。皆さん武器にちは! ウェポンチャンネル!のインゴットです」
治癒ネズミ:武器にちは!
ラン:こんちはー
アチャチャ:こんちゃ
モフモフ狂:こんにちは〜
開幕の挨拶コメントをしてくれたのは、常連が2人、それと初見が2人。ありがたいことだ。
インゴットはそれぞれに挨拶を返していく。
「治癒ネズミさん、モフモフ狂さん、今日も来てくれてありがとうございます。ランさんとアチャチャさんは初めてですね、どうもインゴットです」
挨拶が済んだ所で、今回のダンジョン配信の企画を説明していく。
「さて、Yitterを見てくださった方はお分かりかと思いますが、本日はゲストと2人でグルメダンジョンを攻略していきます。それでは、どうぞ!」
呼ばれたので、剣豪はカメラ外からひょこっと顔を出し、ふにゃりと笑顔を見せた。
「あい〜。どもども、剣豪でーす」
治癒ネズミ:剣豪さん!?
モフモフ狂:髪がモフモフだ〜〜〜やった〜〜〜
常連の治癒ネズミはインゴットと同様に剣豪の姿が女性であったことに驚いている。
モフモフ狂は……変な所に注目している。これはこれで通常運転だった。
「もふもふでーす。ふもふも」
剣豪は自前の長い髪をモフりながら見せつけていた。結構ノリが良い。
ラン:ツルっちー来たよー
アチャチャ:何やってんの(笑)
「おー、2人ともよっすよっす。来てくれてあんがとー」
どうやら初見2人は剣豪の友人のようだ。配信に出るということで、友人にもお勧めしてくれたのだろう。
インゴットは軽く仕切り直して、進行した。
「というわけで、いつも配信を見てくださっている剣豪さんにお越しいただきました。剣豪さんの攻略に、私が保護責任者として同行する形です」
「いぇーい。よろっすー」
剣豪はカメラに向かってしきりにピースしている。
インゴットはオープニングトークとして、剣豪に質問をした。
「剣豪さんから依頼があったわけですが、どうしてここのグルメダンジョンを攻略しに来たのか理由を聞いても?」
「んー。あーし弟がいるんだけどさ、今月誕生日で」
「ほうほう」
「美味しいもの食べさせたげたいなーって。あーしも弟くんも、お寿司好きだから。今日はお寿司いっぱい稼いで帰りたい!ってカンジ」
治癒ネズミ:弟さん喜びますよ
アチャチャ:思ったより真面目な理由で泣いた
ラン:ウチらの分も取ってこーい
「なるほど。それは素敵な目的ですね。それじゃ、私も全力で手伝います! お寿司狙いましょう!」
「おっしゃ〜」
理由を聞いたインゴットは、改めてダンジョン攻略に身が入るのだった。




