第18話 喫茶店の窓際で、ふたり。
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とある休日の午前。
寝ぼけるほど遅くはないが、まだモーニングセットを頼めるような時間に、インゴットは喫茶店に来ていた。
閑静な住宅街の片隅にひっそりと居を構える、隠れ家的な古民家カフェ。
落ち着いた色合いの木造建築と、それに合わせた木のテーブルに椅子。
席数は少なめ。
燕尾服を着たダンディーな男性が1人で経営する、なかば趣味のようなカフェだ。
入り口の扉をゆっくり押し開けると、カランカランと鈴が鳴る。
「いらっしゃい」
「おっす」
マスターとインゴットは学生時代からの友人だ。
コーヒーを飲みたい時や、何か作業をしたい時、よくここを利用させてもらっている。
治癒ネズミからのお礼と相談を受ける場所として、折角だからと紹介がてら馴染みの店をオフ会の会場に指定したのだ。
マスターは赤字覚悟のリーズナブルな値段設定で提供しているので、そこも問題はない。
なにしろ、「計算が面倒だから」と、すべてのメニューを500円にしているくらいだ。
コーヒーもカレーもサンドイッチも500円。
量は相応に変動するが、味は保証されている。
「今日は人を待つんだ。窓際の席、良いか?」
「構わんよ。しかし珍しいな、お前が人と会うとは。おみくじに"待ち人来たる"とでも書いてあったかな?」
「なんか違うだろそれ…」
気の置けない友人との会話では、インゴットは砕けた話し方になる。
軽口をいなしつつ、いつもの席を確保した。
何となくだが、喫茶店の雰囲気に合わせてスマホではなくハンディサイズの文庫本を傍らから取り出す。
集合時間までの10分ほどを読書にあてることにした。
そして10分後。
カランカランと入り口の鈴が鳴る。
黒髪のショートヘアに、春らしい爽やかな色合いのコーデ。
普段見慣れているコンビニの制服姿と違うので、新鮮だ。
清楚な印象と共に、気弱そうな印象も見て取れる。
「いらっしゃい」
「あ、ど、どうも……」
店内をきょろきょろと見渡し、インゴットと目が合う。
インゴットは文庫本をパタリと閉じて、治癒ネズミに軽く手を振った。
「おや、君が"待ち人"かな。あちらの席にどうぞ。注文が決まったら呼んでくれたまえ」
「ありがとうございます」
マスターに軽くぺこりとお辞儀をしてから、治癒ネズミはインゴットの正面の席に座った。
「あの、おはようございます」
「おはようございます」
「先日はありがとうございました」
「いえいえ」
そんな会話をする。
お互いに敬語なので、少し堅苦しい。
「とりあえず注文しましょうか」
「あ、はい。今日はおごります! お礼なので!」
治癒ネズミは両手を握ってふんふん!と意気込んでいる。
好意を無下には出来ないので、インゴットは甘んじて受け入れた。
「それでは、お言葉に甘えますね。私はカフェオレで」
治癒ネズミはメニュー表を見て、少ししてから決める。
「わたしは……ミルクラテと、ショートケーキにします」
「分かりました」
インゴットは慣れた手つきでテーブルに置いてある呼び鈴をチリンチリンと鳴らした。
「お決まりですかな?」
「カフェオレとミルクラテとショートケーキで」
「かしこまりました」
注文を受けたマスターはカウンターに引っ込み、調理を始めた。
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