第17話 新着2件
毎週月曜日の朝に定期更新。
筆が乗ったら不定期に追加更新してます。
「あっ、いえ。ええと……お会計ですよね、少々お待ちください」
「……? はい。お願いします」
配信でしか使っていないインゴットという名前を、こんな所で聞くことになるとは思わなかったので、しばし面を食らい疑問符が頭に浮かぶ。
そもそも、彼の配信はお世辞にも大人気とは言えない同時接続者数だ。
それが偶然にも近場のコンビニで、しかも店員と客として会うという事は天文学的な確率ではないだろうか。
「1250円になります」
「丁度で」
まぁ、そういうこともあるだろう。
深くは考えないことにした。
「ありがとうございました」
「どうも」
一騒動あった事もどこへやら、いつも通りの軽いやり取りで商品の受け渡しを終える。
インゴットは帰路へついた。
帰宅し、スーツを脱いでおもむろに洗濯機へ放り込みつつ、買ってきた物を冷蔵庫に入れていく。
マンドラゴラ天そばを電子レンジで温めながら、スマホでYitterの通知を確認する。
基本的にインゴットに対する反応はまばらにしか無いので通知は来ないのが常なのだが、今日は珍しく、メッセージが2件届いていた。
1件は治癒ネズミから。
もう1件はツンデレツインテからだった。
(これはまた、珍しい。何でしょう)
プッシュ通知の件名だけを見て、ツンデレツインテからのメッセージは先のグルメダンジョンで切り抜き動画の件だと把握する。
こちらの方が先に目についたので、メッセージを開いた。
『平素より大変お世話になっております。ツンデレツインテと申します。つきましては、グルメダンジョンでのインゴット様と剣豪様の切り抜き動画について〜……』
……という、礼儀正しい文章がつらつらと並べられている。
普段、配信にコメントしてくれるのとは雰囲気が異なっていてギャップに驚いた。
(おお……。ロールプレイ分ける人なんだなぁ)
裏での真面目なやり取りに、表のロールプレイを持ち込まない姿勢には好感が持てる。
ツンデレツインテからのメッセージを要約すると、「切り抜き動画ができました。SNSにアップしても良いですか」という内容だった。
メッセージにその動画も添付されていたので、インゴットはそれを見る。
編集技術がある人なのだろう。
主に剣豪の圧倒的な技で敵を瞬殺する場面を30秒ほどに纏めた動画で、かなり見やすいものだった。
内容や演出に悪意は無く、特に問題は見受けられなかった。
インゴットは、ほとんど2つ返事で了承する。
『切り抜き動画の作成ありがとうございます。拝見しました。公開していただいて大丈夫です』
と、返事をした。
これでツンデレツインテの方は大丈夫だ。
もう1件の治癒ネズミからのメッセージを開く。
『こんばんは。先ほど助けていただいたコンビニ店員です。本当にありがとうございました』
そこまで読んで、インゴットは合点がいった。
なるほど確かに視聴者であれば咄嗟にインゴットの名前が出てしまう事もあるだろう。
……と、同時に、こんな近場に視聴者がいたなんて、世界は狭いなぁ、とも思った。
続きを読む。
『お礼がしたいのと、相談したいことがあるので、どこかでお茶しませんか』
というお誘いだった。
コンビニ店員こと治癒ネズミは、20代くらいの若い女性だ。
それが30才の自分とお茶するなど……なにかこう、大丈夫なのだろうか? という不安はある。
とはいえ、今回は理由もあり、相手からの誘いであったので、インゴットは了承した。
『分かりました』
その後は具体的な時間や場所を決める為に数回ほどメッセージのやり取りをし、明日、喫茶店に行くことが決まった。
ちょっと疲れが出てきたので、インゴットは早めに寝ることにしたのだった。
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