9話 《剣豪》の代償
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もっ、もっ、もっ。
剣豪は無言でエビフライを食べている。
食レポしてほしいなぁ、という想いと、まぁこれはこれで画になるか、という想いでインゴットは揺れる。
そんなこんなでエビフライを1本ずつと付け合わせのサラダを完食した。
「ごちそうさまでした」
「ごちー」
無色210:雲を斬るとこ見たいです!
リクエストのコメントが寄せられた。
そのリクエストに剣豪は快く応える。
「良いよん。見てて見ててー」
剣豪は刀を頭上でふりふりと軽く振り回し、視聴者に向けてアピールした。
インゴットはその様子を見守る。
「ギャル剣流──以下省略斬り!!!」
なんだか雑に放たれた一閃は、しかし、剣風凄まじく空を裂き、空を裂いた。
雲に擬態し悠々と漂っていたモンスターは自分の斬られた由も分からぬまま、真っ二つに両断され、やがてキラキラと輝き、霧散した。
インゴットと、視聴しているリスナー達はまたもや呆気に取られる。
「おお……」
モフモフ狂:もふもふが……
治癒ネズミ:なんか技の詠唱、雑じゃありませんでした?
ラン:すいません、うちの子が
アチャチャ:あいついつも雑なんです
無色210:えっ、いや、あんな上空まで斬撃を飛ばせるのヤバすぎでしょ!?
無色210:あ、リクエスト応えてくれてありがとうございました
「ういー」
剣豪はゆるく返答した。
……と、その時。
剣豪が持っている刀からパキン! と音がする。
インゴットがそちらに視線をやると、根元でぱっきりと折れた刀を持つ剣豪と、その足元に折れた刀身があった。
「剣豪さん、刀が」
「今回は2発で駄目だったか〜……。うう、あーしの刀……」
剣豪はしょんぼりとした顔になり、やや落ち込む。
「んーとね、これがあーしのスキル、《剣豪》。一度見た刀の技なら何でも使える……んだけど、その代わり技を使う度に刀が折れちゃうのよねー……」
剣豪というハンドルネームは、そのままスキルの名前だったのか。
インゴットは合点がいった。
「今回は、ということは折れるまでの技の回数はランダムなんですか?」
「んにゃ、技の強さ? によってかな」
それはつまり、強い技ほど刀が折れやすい、ということだろう。
とあるゲームで武器の耐久度を消費して強力な技を使えるシステムがあったな、というのをインゴットは思い出していた。
「それで……トトっち、この刀、直せる?」
グルメダンジョンに入ってから剣豪の見せ場がほとんどだったが、やっと活躍できる機会が来た。
「──お任せください。最高の仕上がりを約束しますよ」
そう言いながらインゴットは自分の胸をトン、と叩いた。
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