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「ウェポンチャンネル!」〜剣豪ギャルと鍛冶師のおっさんコンビで、有名ダンジョン配信者を目指します〜  作者: ジェイト
序章

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プロローグ

毎週月曜日の朝に更新してます

「本日も鍛冶日和。はい皆さん武器にちは! ウェポンチャンネルのインゴットです」


 オールバックに整えた黒髪。目にはクマ。くたびれた顔のスーツ姿の男性が、どことなく空間に向かって話しかける。

 声は洞窟に反響していた。

 青年の視界の端に、視聴者から寄せられたリアルタイムのコメントが表示される。


治癒ネズミ:武器にちはー

剣豪:こん

ツンデレツインテ:見に来てあげたわよ!


 配信開始の挨拶と共にコメントをしたのは、常連の視聴者3人だ。

 毎回必ずいるわけでは無いが、比較的いる頻度が高く、配信開始当初から定着してくれている。ありがたいファンたち。

 配信主のインゴットは毎度のことながら、自分の配信を楽しみに来てくれる人が数人もいることに感慨深くなった。


「治癒ネズミさん、剣豪さん、ツンデレツインテさん、武器にちは。今日も観に来てくれてありがとうございます」


 インゴットはコメントに向かって頭を下げ、お辞儀をした。

 さて、と。気持ちを切り替えて、今回のダンジョン配信の趣旨を説明する。


「なんだかんだで活動開始から1ヶ月が経ちました。今日は初心に帰って、☆1ダンジョンの[新緑の遺跡]を最初から攻略して行きたいと思います」


 インゴットは配信のカメラアングルを操作し、自分を中心に映す定点カメラ1から、周囲を含めた広角を映す定点カメラ2に切り替える。


 新緑の遺跡、入口。

 辺りには石造りの建造物が点在しており、そのどれもが風雨によって朽ちている。

 苔やツタに彩られており、伸び伸びと生えた草木が自然を感じさせた。


剣豪:初心忘れるべからず


 常連視聴者の剣豪からコメントが飛んでくる。

 インゴットはコメントに感謝しつつ、それに反応した。


「おっしゃる通りで。今でこそ☆1ダンジョンの浅い階層であれば苦戦はしなくなりましたが、そこはそれ。油断も慢心もせずに攻略します」


ツンデレツインテ:良い心がけね!


「ありがとうございます。さて、今回は2時間ほどの配信を予定しているので、うーん……5層の中ボスまで行けたら御の字、ですかねぇ」


 ダンジョンは難易度によって深さも変わるが、インゴットが来ている☆1ダンジョンの新緑の遺跡は、全10階層の小規模なダンジョンだ。

 難易度に関わらないダンジョンの共通事項として、5階層ごとに中くらいの強さの魔物が出現し、10階層ごとに更に強い大ボスが出現する。

 そしてその間の階層は探索が主となるエリアだ。ダンジョンに潜る人の()()は、主に探索エリアの潤沢(じゅんたく)な素材を回収すること、となる。

 ダンジョン配信をする人にとっては、中ボス、大ボスとの派手な戦闘を()に収めることや、貴重なボスドロップ品を持ち帰ることが目的ともなる。


「では、ぼちぼち潜りましょうか」


 インゴットは定点カメラ2を追従モードに切り替え、新緑の遺跡入口から1層へと石の階段を降りていった。

 階段を降り、1層に到着する。

 広大な草原、果実の成る木々、草を()む魔物たち。青空を背に悠々と翼を広げる鳥。

 自分が地下にいることなど微塵も感じさせない、どこか別の世界にでも来てしまったんじゃないかと錯覚するような光景。

 ダンジョンとは、既存の物理法則など全く通用しない、未知の空間だ。ここでは常識は非常識になる。


「まずはハンマー作成からですね。【鍛冶師(スミス)】!」


 インゴットは足元に落ちていた石ころを手に取り、もう片方の手でそれを殴りつけた。

 すると、石ころは石製のハンマーへと姿を変える。

 これがインゴットのスキル、【鍛冶師(スミス)】。素材を武器に変える能力。


「1層に出現するモンスターはゴブリン、スライム、角ウサギ、といった所ですね。セオリー通り、片手剣と盾にしましょうか」


 インゴットは地面に石ころを2つ並べ、石のハンマーで順に叩く。

 そうすると、片方は石のショートソード、片方は石のバックラーへと変わった。

 ショートソードとは、片手で扱えるサイズの西洋剣だ。日本刀が片刃なのに対し、西洋剣は両刃なのが特徴的となっている。これよりも刀身が長いものをロングソードと言うが、大まかな分類としてはどちらも西洋剣(ソード)として纏められることも多い。

 バックラーは手の甲をドーム状に覆う小型の盾だ。盾は裏側の突起を手で掴んで構えるものと、ベルト等で腕に直接装着するものがあるのだが、バックラーはどちらかと言うと後者にあたる。身を隠せるような大型の盾と比較すると防御性能は落ちるが、しかし腕に装着するバックラーはその分だけ手が空くので小回りが効く、という利点がある。


 インゴットは腰のベルトに装着したポーチに石ハンマーをしまい、右手に剣を、左手に盾を装備する。

 準備は万端。意気揚々と真っすぐ次の階段に向けて歩き出した。


治癒ネズミ:鉱石を見つけたいですね


 これまた常連の治癒ネズミからコメントが飛んでくる。

 インゴットは確かに、と頷いてから返答した。


「そうですね。盾は良いとして、石の剣……いえ、これじゃ剣の形をした石ですし、鈍器を持ってるのと変わらないんですよねぇ……。川辺で鉱石探しを優先しますね」


 鍛冶師(スミス)は、使用した素材の品質と、どれだけ手間をかけるか、によって完成品の性能が変化する。

 その辺の石ころを素手で殴っただけなら、最低品質の武器が完成する。包丁で例えるなら、瑞々(みずみず)しい野菜すら押しつぶすような切り方しかできない()()()()だ。

 逆に、鉄や銅などの金属加工に向いている鉱石を素材として、良質な金槌(かなづち)を用いれば、市販の武器よりも性能が良くなる、という次第だ。

 更に突き詰めるのならば、自分専用の工房で、目が飛び出るほど高い宝石を素材とし、最高級の金槌で叩けば、それはもう想像もできないほどの武器が完成することだろう。

 ……今のインゴットでは、工房を持つなど夢のまた夢、ではあるが。


 軽く雑談をしながら川に向かう。

 ☆1ダンジョンでは地形が固定となっており、何度も訪れているインゴットにとっては川まで行くのにそう時間はかからなかった。

 これが☆3や☆4の高難易度ダンジョンともなると、一定時間が経過するごとに地形や景色が変貌するので一筋縄では行かなくなるのだが、今は関係の無い話だ。


「はい、川に到着しました。1層なのであまり良い鉱石は出ないでしょうが、とりあえず鉄鉱石を見つけたい所ですね」


 そんな事を言いながら辺りを見渡していると、幸先良く鉱石の塊を視認できた。

 それと同時に、鉱石の近くに魔物がいるのも確認する。


剣豪:鉄だ

ツンデレツインテ:スライムもいるわね


 そろそろ戦闘を、と思っていた矢先にスライムも鉄も同時に発見できるとは運が良い。

 スライムは最弱の魔物だ。少なくとも、☆1ダンジョンの低層に出現する無個性な個体であれば、駆け出しの冒険者が無策で倒せるほどに。

 インゴットは盾と剣を構え、スライムに近づく。


「周囲に敵影無し。よし……では本日最初の戦闘、行ってみましょう!」


 インゴットは左手の盾を前面に構えつつ、スライムに向かって走る。

 その勢いのまま、右手の剣を下手から斜めに斬り上げた。


 スライムは小石サイズの核を基点として、周囲を流動体で守っている生命体だ。

 それ故に、物理攻撃でスライムを倒すには2通りの方法がある。

 1つは、核を壊すこと。動き回っている小さい核を狙うのは難しいが、あえて狙わずともラッキーヒットで壊せてしまうこともある。

 もう1つは、流動体……スライム部分を分割し、形を保てなくすること。核から切り離してしまえば、その部分は復活することは無い。


 インゴットの斬撃により、スライムは2分割される。

 形を保てなくなったスライムは、程なくして自壊し、キラキラとしたゲームのようなエフェクト共に消えた。

 勝利である。


治癒ネズミ:ナイスです!

ツンデレツインテ:スライムならワンパンね!


「ありがとうございます。いやはや、自分で言っといてなんですが、低層なら苦戦しませんね」


 スライムが消えた跡に、光るアイテムが残っている。いわゆるドロップアイテムだ。インゴットは身をかがめてそれを拾う。


[スライムゼラチン]

 スライムからドロップするゼラチン質の塊。ぶよぶよとした弾力があり、触ると少しひんやりしている。


「お、これは中々。盾の素材になりますね。さて、鉄鉱石は……と」


 鉄が露出している鉱石の塊に近づき、石のハンマーで叩いて取り出す。


[鉄鉱石]

 様々な武具の素材となる、ありふれた鉱石。まずはここから。


「よし。それじゃ鉄も取れたことですし、次は何の武器を作るか、コメントで募集します。皆さん、どんな武器が見たいですか?」


 インゴットは視聴者にそう問いかけ、コメントを待つ間、近くの岩場に腰かけて小休憩を取った。

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