9 小さな星の絵
小さな星の絵
それは奇跡だったのかもしれない。
あるいは、ただの偶然だったのかもしれないけど、ずっと空を覆っていた雪を降らせていた大きな雲はなくなっていて、テントの外に出ると、夜空はいつのまにか晴れていた。
そこには、かれんの言っていたように、きらきらとした砂を撒いたような満天の星空が広がっていた。
見渡す限りの、星。星。……、星。
あすみは空を見上げたままで、感動して動けなくなってしまった。
(そんなあすみを見て、かれんは満足そうに笑った)
かれんは絵を描くための準備をして、そんな奇跡みたいな星空を見ながら、絵を描き始める。
あすみはその隣に座って、星を見ながら、かれんの、あすみの見ている星を一つだけ切り取ったみたいな、絵を描く様子をじっと見ていた。
空には満天の砂の星。
大地には積もった真っ白な雪があって、風はなくて、とても冷たくて澄んでいる空気があった。
あすみとかれんはそんな夜の中にいる。
「今生きているときにさ、まるで夢を見ているみたいだなって、思うときがあるの」と絵を描きながらかれんは言った。
「夢ですか?」あすみは言う。
「うん。夢。あすみが私の夢を見たって言うから、そんなことを思い出したんだ。あすみはそう言うことってないかな?」とかれんは言った。
あすみは考えてみる。
子供のころからの夢だった、大好きなアイドルになれて、大好きな歌を歌って、喜んでくれる人がいて、それはあすみにとって夢を見ているようだった。
「アイドルのときの私は夢を見ているみたいです」とあすみは言った。
「アイドルはあすみの夢。あすみは夢を現実にした。それはとてもすごいことだし、素敵なことだと思う。でもそうじゃなくてもっと、なんていうのかな、『本当に夢の中にいるみたいな感じ』がするときがあるの。現実の世界の中で生きているのに、今が現実だと思えないっていうのかな? あれ、今、私ちゃんと目を覚ましているんだっけ? もしかして、夢を見ているじゃないのかな? って、どきどき思うときがあるの」かれんは筆を動かしながら言った。
あすみは小さな四角いキャンパスの中に描かれ始めている、輝く一つの笑っている星を見る。