7 あのころのわたし。
あのころのわたし。
わたしはいつも泣いていた。
悲しいことばっかりだったから。
泣いてばかりいた。
すると、いつのまにか、わたしの世界は涙でいっぱいになってしまった。
あらゆるものが涙のなかに、沈んでいった。
それが、わたしの世界の本当の姿だった。
そんなところで、わたしはいつも暮らしていた。
笑顔を浮かべて。
とてもたくさんの優しい人たちに、とてもいっぱいの嘘をつきながら。
生きていた。
……、無理をして。
いろんなところが、痛いままで。
「かれんさん。私、かれんさんのことが大好きです」と夜の静かなテントの中であすみは言った。
「私もあすみのこと大好きだよ」と絵を描く準備をしているかれんは言った。
かれんは画家だった。
自然の美しさを描く画家だった。
「本当にですか?」とちらっとかれんを見てあすみは言う。
「本当だよ。あすみはすごく可愛いよ。アイドルになれるだけのことはあるよ」とふふっと笑ってかれんは言った。(そのかれんの言葉を聞いて、あすみは顔を真っ赤にした)
風は止んだ。
雪も降り出してはいない。
天気は確かに晴れになっているようだった。
もしかしたら、星を見ることができるかもしれない。
「かれんさんはどうして画家になろうって思ったんですか?」とずっと聞いてみたいって思っていたことを、勇気を出して、あすみは聞いてみた。
都会でばいばいをしたときには、聞くことができなかった。自分に自信がなかったから。(自信がないのは、まあ今も同じなのだけど、あのときよりは、ずっとあった)