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「あ、また雪が降ってきましたね」と車の外で降り始めた雪を見て、子供みたいにはしゃいだ声であすみは言った。
「うん。降ってきたね。これはまた積もるね。雪かきしないといけないな」とめんどくさそうな顔で、かれんは言った。
「お手伝いします」と楽しそうな顔をしてあすみは言った。(体力には全然自信がないけど、かれんさんと一緒ならとっても楽しそうだった)
かれんがあすみを見せたいものがあるんだって言って連れていってくれたところは、少し遠いところにある、大きな湖だった。
とても綺麗な湖で(まるで絵画のようだった)その湖は凍っていて、大きな鏡のように見えた。
周辺には森があり、遠くには山々がある。雪が降っていて、世界は白く染まっていて、ずっと先のほうまでは、世界ぼやけてしまって見通すことはできない。
まるで生と死の狭間のような幽玄な世界が広がっていた。
「すごい。とっても綺麗で、なんだか神秘的なところですね」と湖を見ながらあすみは言った。
「私の夢だったんだ。こんな綺麗な大自然に囲まれて生きること。だから、いろいろと大変だったし、今も大変だけど、今の暮らしにすごく満足してる」とかれんは言った。
「雪かきとかですか?」
「そう。雪かきとか」と笑ってかれんは言った。
そんなかれんの言葉を聞いて、ここがかれんさんの憧れた風景なんだ、とあすみは思った。
そんなあすみに雪が当たった。
見るとかれんが雪玉を作ってあすみに投げていた。
あすみも雪玉を作ってかれんに投げかけした。
そんな風にして、少しだけ、二人は雪遊びをして楽しんだ。
それから小さな赤い車の中からかれんは折りたたみ式のテントを取り出した。
そのテントを見てあすみはびっくりする。
「え!? かれんさん。テントを作るんですか?」とテントの準備を始めたかれんを見てびっくりした顔であすみは言う。
「そうだよ。今日はこのまま、ここにテントをはって、二人で泊まるの。楽しそうでしょ?」とかれんはにこにこしながら(いろんな荷物を取り出しながら、トンカチと大きなくぎみたいなものを持って)そう言った。