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「相変わらず学校。いってないの?」と車の運転席で、かれんは言った。
「はい。いってません。たぶん、もう行かないと思います」と助手席に座って、あすみは言った。
「ふーん。そうなんだ」と安全確認をしながら、車を動かして、かれんは言う。
「はい。そうなんです」とあすみはにっこりと笑ってそう言った。
小さなおもちゃみたいな赤い車は雪の積もっている大地の上にあるアスファルトの道を走りはじめる。
車の中には、音楽はない。(かれんがかけなかった)
道はすいていて、だんだんと駅から離れると建物の数もとても少なくなっていった。
それから、二十分くらい車が走ると、風景は電車の中で見ていたのと同じような真っ白な世界になった。
かれんのお家は、そんな真っ白な雪の大地の上にぽつんと立っていた。
「どうぞ」と小さな小屋の中に小さなおもちゃみたいな赤い車を止めて、玄関の前までつくとかれんは言った。
「おじゃまします」と言ってあすみはかれんのお家にお邪魔をした。
かれんのお家はとても綺麗で物が少なかった。
テレビもなくて、音楽もなくて、かれんがつけてくれた、ごーっというストーブの音だけが部屋の中に聞こえていた。
白いキッチンのある黄色い壁のお家だった。(なんだか北のほうにある異国のお家みたいだった)
たまに、どさっという音がして、屋根の上から(あるいは近くにある木からかもしれないけど)雪が落ちる音がした。
「ここにすわって」とかれんに言われた通りに、あすみはふかふかの白いソファの上に座って大人しくしていた。
その間に、かれんはあったかいコーヒーを淹れてくれた。
それから(お腹が少し減っていると車の中で話していたから)厚めのパンでトーストを焼いてくれた。
バターをたっぷりと塗って、厚めのトーストをかじると、とても美味しくて、思わずあすみは笑顔になった。
「どう? おいしい?」とコーヒーを飲みながら、かれんは言った。
「はい。とっても!」と口をもぐもぐしながら、あすみは言った。
「どうして急に私に会いにきたの?」とキッチンの椅子に(逆の向きで)座ってかれんは言った。
「夢をみたんです。かれんさんの」と(ペンギンの絵のあるマグカップの)ミルクをいれたコーヒーを飲みながらあすみは言った。