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9 佐伯の後輩さん、ですよ

 ウチの……鳳来寺組界隈は、主に横浜がシマとなっている。

 もちろん俺は、あんまりキャバクラだとか風俗のお世話になったことが無かったからこういう店がある通りやらお店自体に来ることも初めて。だけれど……やっぱり興味は、わかないかなぁ。

 これって、所謂洗礼ってヤツなんだろうか。ほぼ、初めてこういう店に来た俺に待っていたのは露出の激しい女の子たちからのキャアキャア騒がれる声という名の洗礼だった。ちなみに今、来ているのはキャバクラだから、まあ、よっぽど悪さをしていない限りは安全そうな店だとは思うんだけれどねぇ……。

 それにしても、女の子たちの恰好……こんなに外は寒くなってきているというのに、ちょっと薄すぎない?女の子の体には冷えはご法度、って言ってあげたいのは山々なんだけれど、どうしても露出が多いドレスを着ている女の子たちの体に心配してしまう。


「キャーッ!佐伯さん!?お久しぶり!あらあら、すんごいイケメンと一緒じゃないですかぁ~!」


 佐伯も集金以外で、こういう店を利用して遊ぶこともあるんだろうか?これまた若い女の子(近くに横浜中華街があるから身に纏っている衣装もチャイナ風で、ちょっとコスプレしている感じが見られるけれど、こういう服が好きな客からすれば目の保養にもなっているのかもしれないなぁ)が佐伯に向かって声を掛けていくものの、当然ながら佐伯と同行していた俺の姿も視界に入れると『イケメーン!』とキャアキャアと騒ぎ始めてしまった。う~ん、あまり目立ちたくは無いんだけれどなぁ。

 

「あー、俺のことは気にせず。……えーっと、こういうのってお店のオーナーさんと話付ける感じ?」


「え、えぇ……そうっすね。まあ、こんな感じで顔を出すとお店の女の子たちが騒がしいのがちょい鬱陶しいんすけれど……」


 店のオーナーさんがお店の集金を用意している間、どうしても時間が余ってしまうものだから近くにいた女の子たちにはキャアキャア騒がれてしまっているのだけれど、なんとなく佐伯の様子を見てみれば若い女の子に囲まれていて満更でもなさそうなんだよなぁ。こういうところは、佐伯も男なんだねぇ。うん、健全で良いことなんじゃないかな?


「えぇー!?鬱陶しいって失礼過ぎ~っ!佐伯さんだって女の子好きな癖に~!」


「だぁ!お前らうるせぇっつーの!だいたい今は休憩している時間なんじゃないのかよ?こういうときはゆっくり休んで客が来たらもてなしてあげろっての!」


 こういう店っていつからオープン……営業しているんだろう?だいたい俺の想像では、夜に開店していることが多いのかなぁとは思っていたけれど、こうして女の子たちが揃っているってことは昼でも営業していたりするんだろうか?

 でも、佐伯からすれば今は休憩タイムとのことらしい。それでも休憩するよりも佐伯に会いにやってきてくれるなんて……佐伯ってば愛されているねぇ。お店の女の子のことだから、それはお世辞だとか営業の意味で愛されているって考えられなくもないけれど、それでもつっけんどんにされるよりかは全然良いんじゃない?


「んもう~!佐伯さんが来たら盛り上がるのは仕方がないじゃな~い!それに今日は見たことのないイケメンさんも一緒だしぃ~!」


 ありゃ。気付かないうちに俺の片腕をぎゅっと抱き込むように一人の女の子に近寄られてしまった。この子も一般人からすれば露出の多い恰好をしていると思う。チャイナ服とはまた違った、ドレス?姿で良いのかな?それにしても肩とか足とか、下手をすれば胸の谷間なんてモノは堂々と見せて当たり前みたいな恰好をしているからお店から指定された衣装の一つだったりするんだろうか。


「お兄さんは、佐伯さんの後輩さん~?お名前は~?私、アリサって言うんです~!」


 わざわざ名を名乗ってくれたアリサという女の子は髪の毛もくるくると巻かれていて、綺麗にドレスに合わせて準備されているんだろうねぇ。そんな女の子が下から俺の顔を覗き込んできて、名前を聞いてきた。


「はぁ、一応後輩さんですよ。名前は、久保田昴流くぼた・すばるです」


 こういうお店って、女の子との絡み……触れ合いとかってご法度なんじゃなかったっけ?でも、女の子の方からこうして腕を絡められるとどうなんだろう?こういう場合であったとしても、もし俺が客だとしたらアウトになっちゃったりするんだろうか。


「まぁ!久保田さん!素敵ぃ!」


 『久保田』なんて名前は、何処にでもあるような名前だと思うんだけれどねぇ。それでも俺の名前を知ったことで余計にテンションがアガってしまったらしい女の子は、なんと俺と連絡先の交換まで強請ってくるようになってきてしまった。えーっと、さすがにこういうのは……佐伯も佐伯で囲まれている女の子たちの対応に困っているようだしねぇ。まあ、連絡先ぐらいは別に何の価値も無いものだからいいか……と安易な考えでスマホを手にすると交換先をお互いに交換し合ってしまった。交換した後、彼女の連絡先にあった表示名には『アリサ』とあったから日頃からこの名前で過ごしているんだろうか?源氏名?の類かとも思ったけれど、コレはコレで分かりやすくて良いかもしれない。キャバ嬢たちとの連絡のやり取りは、あとからマズイことっすよ!とでも注意を食らえば、彼女から連絡が来たとしても無視をすればいいか、うん。


「うっふふ~!ありがと、久保田さん!久保田さんがウチの店に来たらいーっぱいサービスしてあげるんだからね!」


 キャバクラでのサービス……まったく予想がつかないんだけれど。なんだろ、お酒のサービスとかってヤツになるんだろうか?酒自体は、そこそこ飲めるけれど……どっちかと言ったら甘いモノの方が良いかな。なーんて、甘いモノをサービスされるものならサービスを受けてみたいけれどね。


「はぁ、そりゃどうもー。でも、俺あんまりキャバクラとかって来たことが無いもんで、俺みたいなつまらない客だとお姉さんたちも楽しめないんじゃないかなぁ?」


 『キャバ嬢には興味無し』と俺の顔には書かれていると思うけれど、俺と話をしてくれている女のアリサとしては、こうして話が出来ているだけでもじゅうぶんストレスから解放されているらしい。


「あら。そんなこと無いわよ~!イケメンは見ているだけで目の保養になるもの!たまーに、タチの悪いお客さんたちが来るとお触り禁止!って言ってるのに手が出てくるんだから……失礼しちゃうわ!ウチは、そういう店じゃないんだから~」


 あぁ、やっぱりそうなんだ。キャバクラは、どっちかって言うとお酒を楽しむ場所だもんねぇ。そこで女の子との距離が近いとは言え、手を出そうものならば出禁でもくらってしまうのかもしれない。でも、バレないように、さらっと手を出してくる客は絶えないのだろう。とうとう女の子の口からも愚痴が……本音のようなものが出るようになってきたみたいだった。


「まぁ、お酒も入ると気分も高揚しちゃうもんだからねぇ。ダメとは分かっていても、こんなに綺麗で若い女の子がいれば手を出したくなっちゃうんじゃない?」


「まぁ!久保田さんってば、お上手~!」


 キャバ嬢とまともに話すのも今回が初めて……だと思うけれど、意外と話をしてみると面白いものなんだなぁ。本気か冗談か分からない言葉もまじえつつ、他のタチの悪い客に対しての愚痴やら文句やらを聞いていくと、そういうヤツらに限って店の常連客になってしまっているらしい。常連で、そこそこに金を店に落としてくれるものだから、なかなかに女の子としても無碍に扱うことは難しいところなんだろう。それにしてもキャバ嬢かぁ……こういう業界で働く女の子たちもストレスでいっぱいいっぱいって感じがするなぁ。そのストレスが変な方向に向かっていって、悪いモノに手を出さなければ良いけれどね……。


「一応、言っておくけれど……あんまり知らない人から怪しいモノを勧められても口にしない方が良いかもねぇ」


「あら!心配してくれてるのぉ!?うっれしい~!大丈夫!安全そうなモノだとしてもお客から用意されたモノなんて一切、口になんかしないんだから~!」


 へぇ。

 こういうところで働くからには、金か、それとも……怪しい薬か、そのために働いている子ばかりかとも思っていたけれど、そういう子ばかりじゃないらしい。少なくとも俺と話している女の子……アリサは、怪しいモノには口にしない!と断言してくるほどだったから、きちんと自分の体を大切に考えているのかもしれないねぇ。


 そうこうしているうちにオーナーさんから店の売り上げを用意してもらって佐伯が手にしていくとキャバクラ店から出て行った。もちろん女の子たちは佐伯にも俺にも見えなくなるまで店の外まで出て来てくれて見送りをしてくれて、基本的には、何処にでもいる女の子とそう変わりは無さそうだなぁとしみじみ思うのだった。

 初キャバクラ来店!金のためならなんでもする?いえいえ、キャバクラで働いている子のなかにだって信念……きちんと考えを持って働いている子もいるんですよ。


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