表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/9

2 初めて銃を手にした日

 鳳来寺さんと共に向かったのは、同じく横浜にある建物……。

 見た目は、普通のビルっぽいけれど……ここが?それにしても……タバコが吸いたいなあ……。

「……思っていたよりも普通なんですねぇ」


「はは、だから言っただろう?普通だと、ね」


 無駄に金を掛けていそうなキンキラリンの調度品の一つでもあるかと思っていたけれど、それらしいモノは特には見当たらないし、物騒なモノが壁に立て掛けられているってわけでもなさそうだなあ。

 鳳来寺さんの後について『事務所』に入っていくと、そこには自毛……いや、アレはブリーチでもして金髪にしたであろう短髪をヘアーワックスか何かでガチガチに固めたそこそこ若そうな感じの人(でも、ちゃっかり着ているモノは独特な柄のシャツにグレーのスーツだったらからこの世界に身を置いている人間なんだろうねぇ)それから……。


「!もが、もががが!!」


 床には手足を縛られ、そして口元にはガムテープを何重にも貼り付けられて転がされている一人の男。一応、鼻は自由が利くから呼吸には問題無さそうだけれど……この人、服の上からでも分かるけれどボロボロにされているから、もしかしてポカでもやらかしたんだろうか?


「……そっちの人は、取り敢えず置いておくとして……そちらさんは?」


 俺が興味を持ったのは、金髪の若者の方。

 まあ、身なりを見るからには同じヤクザ関連の人だと思うけれどね。俺がちらっと金髪の若者に視線を送るものの不機嫌そうに眉を顰めて俺からは顔を背けられてしまった。あら、もしかして俺ってば、嫌われた?


「彼は、佐伯くんだ。一応、若い者たちの準まとめ役といったところだろうか。ただ……そこの転がっている人間もどきが本来ならば若手のまとめ役だったんだが、ウチのシマ以外にて薬物の売買……まあ、端的に言えばポカをやらかして問題になっているといったところだな」


「はぁ、なるほど……」


 そう言うと鳳来寺さんは机の引き出しを開けると、そこからは当たり前のように二丁の拳銃を取り出して、机の上に置いた。そして、俺を見て口端を上げて見せたものだから俺に『ヤれ』ということだろうか。


「俺に、始末させろ……と?」


「この二丁の拳銃は、どちらか一つに面白い細工がされていてね。下手をすればキミの片腕なんかは軽く吹っ飛ぶかもしれない。もう片方は、ごくごく普通の拳銃だよ。……この、どちらかを選んで、そちらに転がっている人間もどきを始末してくれないかね?そこの人間もどきが死んだとしても心配するような身内はいないから安心して撃ってくれて構わないさ。……賭け事が、好きなんだろう?」


 へぇ……。あの雀荘は、ちょっとヤバそうな人たちの管理下にあるって話だったけれど、まさか俺のこともそこそこに知られていたりするんだろうか。

 一丁は、普通の銃。そしてもう一個の細工されている方を選べば俺の手が使いモノにならなくなるってシロモノか。二分の一……いや、俺からすればゼロかイチかの大勝負。なかなかに面白いことをさせてくれるじゃないか。


「……まあ、ここに連れて来られたからには何かあるとは思いましたけれどねぇ……俺も、一応両手が無いと不便なんですよ。麻雀が出来なくなっちゃうんで……」


 俺は、特に何も考えることなく一つの拳銃を手に取った。あぁ、拳銃って思っていたよりも意外と重い。これが拳銃の重さっていうヤツなのか。この重さが人の命を奪う重さ、なのか……。

 そして、まるでオモチャの拳銃を向けるかのように床に転がっている男に拳銃の銃口を向けていくと、さすがに『死』を感じたのか、床に転がっている人間は必死になって何かを言おうとしているもののそれは残念ながら言葉になっていないし、鳳来寺さんは聞く耳なんか持っていないんだろうなあ。傍らに立っている……えーっと、佐伯?って名前だっけ?この人も、特に床に転がっている男のことを助けようだとか、庇おうって考えは無さそうでじっと俺の様子を伺っているらしい。あんまり目立つことは好きじゃないんだけれど……まあ、コレも良い人生経験の一つってことで……。


「悪いね。アンタとは面識は無いけれど……俺、そこそこに麻雀は好きだから。それが出来なくなるのは嫌なんだよね」


 そう告げると、特に何も思わないままに俺は銃口を引いた。


 パァンッ!!!


 と銃口から一発の銃弾が飛び出すとともに床に転がっていた人間……は、もはや身動き一つ取らぬ、『元』人間と化してしまった。えーっと、人間って燃えるゴミ?死ぬと火葬に出すから、一応燃えるゴミってことで良いんだっけ?

 銃を撃つのは、たぶん初めて。それだけに、自分の耳が一瞬キーンとする感じ、そして手に感じるビリビリとした痺れのようなモノがしばらく続いたけれど、たった一発の小さな銃弾で人間というものはこんなに簡単に死ぬんだなぁ。……実に、あっけないものだ。


 パチパチパチ


 鳳来寺さんは、『元』部下が目の前で殺されたというのに表情を変えることは無く、むしろ俺が躊躇することなく銃口を引いたその気の強さに感心したように口元を緩めて拍手までしていた。傍らに立っていた佐伯は、ぽかーんとしてから『すげぇ……』といった呟きが聞こえてきたのだけれど、何が凄い?銃なんてその気になれば子どもだって扱えるモノだろう。それとも、一切躊躇うことが無く銃口を人間に向けたことが凄かったんだろうか?面識は無い、それにポカをやらかしたから鳳来寺さんは始末したがったんだろう。だったらコイツが死のうが、逆に俺の片腕が吹っ飛ぼうが……どちらでも良かったのかもしれない。

 取り敢えず、俺の腕は無事だったようでそれだけは安心出来た。うん、これでまた麻雀が出来る。


「佐伯、彼をどう思う?」


「え?そう、ですね。……一般人が、すんなりと銃で人を殺すなんてどっかの組のモンかと思いましたけれど……あ、いや、ただ単に凄いとしか思えないっす……」


 先ほどまではちょっと不機嫌そうな顔をしていた佐伯だったけれど、俺があっけなく銃をぶっ放して見せたせいだろうか、興奮しているようだ。


「……だ、そうだ。久保田くんといったかな。キミに、若手のまとめ役としてお願いしたいのだが……どうかね?」


「どう、と言いつつそれって強制じゃないですか?まあ、別に俺は構いませんけれど」


 ヤクザの世界か……。

 細かなルールとかあるんだろうか。でも、よほどの事をしなければ違反にはならなさそうだし、結構好き勝手に出来る時間もあるらしい。まあ、この世界に飛び込んでみるのも新たな見識が広がって良いかもねぇ。


「若手たちにはこことは別の事務所を用意させているから佐伯にでも案内してもらうと良い。……さて、こちらを片付けなければな……」


 別の場所にも事務所があるのか。

 それに、鳳来寺さんは少々困ったように床に転がっている『ブツ』を静かに見下ろすと控えていた部下たちを呼び寄せて後片付けをさせはじめていった。『アレ』は、どのように始末されるんだろうか。適当にゴミとして処理される?それとも横浜湾辺りに沈められるんだろうか……。


「!じゃあ、俺が案内していきます。えーっと……久保田さん」


「……久保田昴流くぼた・すばる。どっちでも良いよ。えーっと……佐伯……下の名前は?」


佐伯光治さえき・こうじっす!」


「そか。んじゃ、案内よろしくね、佐伯光治クン」


「うっす!」


 この日、俺がヤクザの世界に入り込んだ日。

 そして、初めて人を銃を使って殺した日。

 さらに、新たな人間関係が生まれた日。


 ヤクザの世界にもきちんとしたルールがあって、それを破れば冷酷に始末されると知った日でもあった。もしかしたら俺も、だらしなく床に転がされて始末される日が早かれ遅かれやってくるのかも……取り敢えず、今日のところは腕は無事に済んだ。

 外に出たところで、佐伯に一声掛けるとポケットからタバコとライターを取り出せば、タバコを口に咥えていく。先ほど、この手で銃口を引いた、そして人を殺したというのに、不思議と俺の手は震えてもいなかった。


「あ。ちょい待ち。……一服してからでも良い?」

 久保田は麻雀も好きだし、タバコも大好き!そして、もっともっと好きなことはあります!もちろん苦手なモノもあったりしますが……この度胸の強さは、一体どこから生まれたんでしょうねぇ?


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ