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依頼人

俺は依頼人の家の前に来ていた。


「ここで、間違いないよな?」


今思えば、俺の外見は目つきが悪くて、ガタイのいい如何いかにも悪いことしそうな外見をしている。

全くそんなことは無いのだが。

今までの人生、人に嫌われたことはあったものの好かれたことなどなかった。

ネムさんも疑っていたわけではないだろうが、少し疑問を持っていてもおかしくはない。


「まあ、今更だけど…。」

俺はドアをノックした。


「そういや、俺を見て驚かないかな?」


ここに来て、自分の外見を思い出す。

何せ初対面なのだ。


「は~い。」

若い女性の声がした。


え?女の人?

家事手伝いっていうから男性かと…。


ドアが開けられた。

目の前には銀髪で、背が低く髪が長い女性が立っていた。


「ああ、冒険者の方ね。どうぞ入ってください。」


彼女は俺を見ても動じることなく、落ち着いた口調で家に招き入れた。


「あれ?」


俺は呟いてしまう。

この人エルフじゃないだろうか。

耳が長くてとんがっている。

新緑の瞳が神秘的な色をしている。


彼女は、俺の言葉を全く気にしていない様子だった。


「私は、カモミール・ムルフェ魔法使いをしています。研究してるとお掃除やら食事やら疎かになってしまって、今回依頼しました。」


俺は自己紹介をする。

「俺は荒滝 未来です。ミライと呼んでください。簡単な料理や掃除くらいなら出来ます。よろしくお願いします。」


ぷっ

カモミールは笑い出した。


「ミライくんだっけ。外見と中身が全然違うね~。今まで苦労してきたんじゃない?まあ、《《この世界》》なら生きやすいだろうから安心してね?」


「え?」

俺は一瞬不安になった。


「ごめんごめん、私少し見える人だからさ。今までの君の過去とか…。異世界から来たとか言わないから安心して?」


俺の中でエルフのイメージがガラリと変わった。


「ちょ、ちょっと?カモミールさん?何ですかこれ…。」


前の世界のごみ屋敷っていう感じに近いだろうか。


「どうもお掃除って苦手みたいでね。出来なくてさ。一応努力はしたんだけどね…。」


これはかなりひどい。

酷すぎる。

足の踏み場もないとはこのことか。


「はぁ。まあお仕事だし。頑張りますか。」

俺は袖をまくって、近くにあるゴミ?に手を付けた。




少しは綺麗になったかな。

時間の感覚がわからない。

半日は経ったのだろうか。

外を見るとまだお昼前かもしれない。


「お~だいぶ片付いたね。良かった、良かった。」


「こうなる前に何とかしてくださいね?」


「はいはい。」


「大丈夫だよ、そしたらまた雇うから…。」

全く懲りていないようだ。


俺の仕事は家事手伝いのみ、あまり口うるさく言わないでおこう。

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