第四話
「実は討伐してほしいの」
「分かった」
「勘違いしないで。もう主従関係じゃないのよ。討伐するごとにお金も出すわ」
それは事実上の援助資金である。
「それと、そもそもなんで妖魔族はあれだけの力がありながらこの星を壊滅しないか分かる?」
「あっ!」
「それは今度はただ単に破滅しても魔族の王になれないって事が分かったからよ。マーズランドは現にそうでしょう? だから闇で動いてる。言葉はかっこいいけどやってることはただの反社よ。まあ……吸血族が言えた口じゃないけど」
「で、今回の討伐命令は?」
「自称妖魔族の領土と言って一度戦ってきた妖魔居たでしょ? その妖魔ラジエルとの戦いよ」
「この山の向こうか」
(そう、妖魔族の飛び地があってその向こうに妖精族の領土があるんだよね。つまり隣国だ)
「ということでまた一緒に旅することになるの」
「えっ?」
「連合軍よ。ブルート=ユーリル連合軍」
「なんだかかっこいいな」
「と言っても私とあなたの二名だけどね」
(それは言わないで)
「そいつを倒すといよいよ敵の本拠地に行くのか?」
「まだよ。妖精族の母が居るわ」
「トゥーラの妻か」
「クゥーラと言うの。もっとももう妖精族の風貌はとどめてないかも」
「そっか」
「何でこの国を独立させたか分かる?」
「……」
「もうユーリルは公僕なんて枠には収まらないぐらいの英雄だからよ。だから領地ももらってる。だから国王になってる。勘違いしないで。厄介払いとか思わないで。もし万が一健康被害が出たら全力で治療にあたるわ」
「サラ。ということだ。早速留守番頼むぞ」
「はい」
「はい、これサラさんにも」
「これは……」
「これは魔素中毒に冒されたときの緊急常備薬よ」
「あ、ありがとうございます」
「どんどん領地を広げれば、ここは完全クリーンエリアになるわ。見て!」
それは炎魔族のゴーレムたちが必死に植樹した光景だった。どんどん緑となっていく面積が増えてるのだ。
「彼らだって必死にやってる。しかも自分の領地じゃないのに。高熱の燃料と引き換えとはいえ」
(そうだった。必死に国土を取り戻してるのは自分だけじゃない)
「分かった。頑張る」
「あなた勇者なのよ? 本当に分かってるよね!」
「おうよ」
「私の反魔素物質の鎧はちゃんとここに残してるよね?」
「もちろん。洗浄済みだぜ」
「じゃあ、ユーリルも着替えて」
こうしてユーリルは闇色の鎧と面頬を、カラは紫色の鎧と面頬を再び身に着けた。
「この鎧、進化してるのよ。背中のこの部分を下げて見て?」
なんと吸魔の鎧と同様に丸い穴が生じた。
「吸血族は翼を出してなんぼだからな。特に汚染地域じゃないとこで戦う場合、効果的だぜ。ありがてえぜ」
そう、吸血族は翼を出すと怪力も出せるのであった。