第三話
「『国』って、たった十一人の国でもこんなに作るの大変なんだね!」
自国の通貨、法律、住民票、社会保険、許認可、学校、病院、入国許可、税金徴収、電気と水道料金……。あらゆる公的業務がユーリルとサラ二人だけにのしかかって来た。
とはいえ領土がどんどん拡張されて行くのは喜びの日々だった。
生活困窮で苦しんだ三人。クビラ、メキラ、バサラの三名の吸血鬼は自国民となった。
それ以外は一時宿泊だったり季節労働者だ。
そして石棺も持ってきた。ユーリルは二度目の敗北の時に自分のために人間を殺してその血を体内に入れたおかげで助かっている。人を殺めたこと、そしてその命に贖罪すること、そして自分はいつ死ぬか分からないという戒めのために今度は自国で石棺儀式を行った。もちろん吸血族だけで。ほかの種族は興味ありげにその儀式を見ていた。
炎魔族も二年で帰還となる。そもそも魔素中毒にかかるリスクも大きい。その分、給料はいいのだが。
(ん……魔素中毒)
(もしかして……)
「なあ、俺たち、これって厄介払いだったのでは。つまり遅発性魔素中毒患者になるって事では?」
「……」
「今頃気が付いたのね。そうよ。私達を合法的に短命にさせるための手法よ」
「ごめんなさい」
「何で謝るのよ」
「だって、君を巻き込んでるじゃないか」
「いいの」
「なんで!」
「だって誰かがやらなければいけないことなのよ、これって。だったらこの地域をいつまでも帰宅困難区域にするの?」
「……」
「私たちは妖魔族に奪われた等しい土地を奪い返してるの」
ユーリルは何も言い返せない。
「で、最後に魔法陣の設置か」
今はこのことを考えるのは止めて言われた通りの魔法陣設置を行った。とはいえ、ユーリルもサラもこの魔法陣は起動できない。片側専用移転装置なのだ。当面の間は援助する人員も含めてここからやって来る。
「で、妖魔族討伐の時はここから誰かが伝令に来ると」
魔法陣を書き終わった。
「魔法陣が終わったことを知らせる狼煙を撃って来る」
ユーリルはそのまま空を飛び上空に向かって光撃呪を唱えた。この知らせが遠くの吸血族にも届くようになってる。
するとなんともう魔法陣が起動したではないか!
「カラ!」
「連合軍の結成の依頼に来たわ」




