第二話
今まで公務員扱いだったユーリルは保険証なども返却する。住民票も移動だ。季節は夏になっていた。セミの音が響く。
そして宿舎にあった私物を片付けるのだ。
自分は、これから吸血族の王として運営せねばならないのだ。
人間族から「奪った血」もこれから自国に輸入していくことになる。
医療体制も、税金も整えなければならない。
たった一年でユーリルは生活が激変してしまった。
開拓希望者はほとんどいなかった。ただ、生活に困窮してた三名が移民船に乗船した。乗船者はたったの五名だった。困窮の原因は公的年金の未払いだった。つまり三名全員が高齢者である。うち老夫婦が二名なので二世帯分だけしか移住を希望しなかったことになる。
「サラ、これから大変だよ」
「ええ」
自分が冒険してる間はサラが国王の代理なのだ。
税金も、社会保険も、医療も、産業も全部自分で運営することになる。しかも裁判官は当面の間自分になるのだ。
出稼ぎ労働者の海魔族や炎魔族のほうが人口が多い。本当に吸血族の国かと言ったら怪しいのだが。というか全人口がたったの一五名というミニマム国家だ。
自分の国に到着する。いつの間にか宿屋は王城となっていた。宿屋は別の場所に移動となったのだ。
「ユーリル国王様! ばんざ~い!」
なんと街の住民が総出で迎えてくれた。
ゼーマ国王の謁見室と比べてはいけないことは分かっている。だが、宿屋そのものであった。ユーリルもここに住む。サラは別の家を確保してある。
「ここから新しい国が始まるんだな」
「そうよ。でもあんまり緊張しないで。『村長』ぐらいに思った方がいいわ」
「それもそうだな」




