~序~
「これはダメだね」
魔法顕微鏡を見ながら研究員は言う。
「この血肉から魔素を爆発させる仕組みだ」
くるりとユーリルの方に振り返った。
「つまり妖魔族というのは魔法を爆発させればさせるほど魔族や人間族が住めない土地を増やしてしまう」
「そんな!」
「そんな血を飲んだらパワーアップどころか、死ぬよ……」
研究員の声は冷たかった。
魔素防御室の中で魔素防御装備をしながら透明魔素防御箱の内側をいじっていた研究者はゆっくりと自分の腕を箱の外側に出した。妖魔族の血肉とはそのくらいの危険物質だったのだ。
ユーリルは魔素防御室の外に出る。
そんな時に研究所に近衛兵がやって来た。
「ユーリル様、王がお呼びです。至急謁見室に」
「そうか。分かった」
雨季がやって来た。研究所の外は雨だった。傘を差しながらユーリルは疑問に思う。
(妖魔族と言うのはじゃあ、滅びの子なのか)
(妖精族と言うのは、世界の滅びの因子を持ってたと言う事?)
王城の入り口で傘を仕舞い射して置く。そして謁見室の前にやって来た。
「ユーリル、入ります」
「ユーリル様、ご到着しました」
「入れ!」
そこにはもう見慣れた光景が広がっていた。
しかし様子がおかしい。ゼーマ王は手に書状を持っている。
(まさか、俺勇者クビになるのかな)