第九話
「何ここ、エレベーター動いてないじゃん!」
ユーリルはエレベーターの扉を蹴った。
「え、でも危ないでしょ? こんなオンボロ建築物のエレベーターに乗ったら」
それもそうかとなった。二人は呆れていた。
「敵が突然墜落させたら私たち一巻の終わりよ!?」
そうでした。ごめんなさい。
「数字見て、二階までしかない」
ん? じゃあ何のためのエレベーターだ?
「仕方ない、そんなの階段で行くぞ」
三人は階段で行くことになった。
「でもさぁ、こんな高層建築物って吸血族の技術でも中々出来ないよ。人間族って実はすごくね?」
そんな技術を失ってしまった。
「うん、実はこの塔の周りも中層の建築物があったわ」
「本当、何があったんだろう」
二階に行くと意外な事に受付と思しきデスクがあった。
「受付……?」
一応カウンターに敵が潜んでないかユーリユが確認する。チケットが落ちていた。どうにか文字が読める。
「これってチケット売り場って事じゃね?」
「見て、これ!!」
サラは何か見つけた。
「これは何? もしかして」
カラは驚いた。
「これはこの塔の模型では? いろんな模型が落ちている」
凄い。
「三階に行くぞ」
三人が階段を昇る。三階には椅子が散らばっていた。
「ますます分からないよ。なに、ここ……」
サラはこの塔の目的が分からない。
「この扉は何だ?」
開けてみると驚きの光景であった。
「これは人力エレベーター室」
なんと脚で漕いでいたのだ。
「そうだよ。これ人力だよ」
階段を見つけた。さらに上がってみる。
四階以降は何もない。部屋があるだけだ。
どうもこの塔で働く人のための居住スペースのようだ。
五階は居住スペースとは言い難い何かのブースであった。
「なんだろう」
六階、七階、八階は机と椅子が散らばっていた部屋があるだけだった。
そして九階に矢印があって階段が見えた。
十階に到着するな否や……。青の鎧を着た奴が居た。
「やあ、ユーリル。俺の名前はトゥーラ。半吸血族さ」
「お前が吸血鬼の面汚しか」
暗黒戦士同士が構える。
「悪いんだけど、ここは俺たちの領土でね。領土侵犯者は処刑しないとね」
「抜かせ!!」
「そもそもこの塔、見た? 電波塔だよ」
「電波……塔?」
「古代の人類はそんな高度な魔法を持ってたのさ。まあ、全部俺たちが破壊したんだけどね」
なんてことを。
「ユーリル。俺はお前を許さない。ハーフというだけでお前ら吸血族は俺たちを差別した」
「してない!」
「それはどうかな?」
そう言うと業火の炎を浴びせて来る!!
「踊れや!」
今度は巨大な氷の刃が向かってくる!!
「今だ!!」
「「魔壁呪」」
三人は一斉に呪文を唱えた。
するとなんと氷の刃がトゥーラ自身に向かっていく!!
「こしゃくなあ!」
飛びのけて跳ね返ってきた攻撃をかわしてなんと雷撃魔法を撃った。
が、これも自分に戻って来る!!
「今だ!! 隙あり!!」
ユーリルは剣で鎧ごと打ち砕く。
「がはっ!」
そのまま鎧を破壊するユーリル。
「やめろ、そんなことしたら俺が魔素中毒に」
「なるんだよな?」
おもいっきり剣を振り下ろした。
鎧が壊れ肌が露わになるとそこを突き刺す。
そして返す手で首を刎ねた。もう首の部分は鎧に守られていなかった。
無言の抗議のように血が噴き出す。
(かつての俺たち勇者パーティーも、こんな最後だったよな)
持ち物にペンダントがあった。
「これをトゥーラを討った証拠品にしよう」
もぎ取るようにペンダントを入手。汚染防止のために箱に入れて仕舞った。ユーリルは魔壁呪を解除した。他の二人も解除する。
「屋上に行くぞ」
この部屋に残された置物の人形が光っていたことを三人は知らなかった。




