第十二話
「むかつくんだよねえ。こういうの見ると」
「申し訳ございません」
闇の中でひれ伏する者と嬉しそうに見下す者がいた。
「フレッシュな肉は用意してるんだろうな」
「はい、これが獣人族の肉でさ」
「これがないと妖魔族として本気出せないんだよね」
肉を確認する。
「よく見て見ろ。思い上がった連中に警告してやる」
そう言うと浮遊し闇夜に昇った。
そして魔法を唱える。
出来たばかりの中継地点のそばに魔導砲を打ち込んだ。
近隣の船が破壊されて行く。
そして元の位置に戻って来た。
「見た?」
「もちろんです」
震えて立ち上がれない。
「魔導砲撃術を討つための源は獣人族や竜族、そして人間族や吸血族の血と肉なんだよ」
そう言うと肉にかじりつく。
「逆の方向に打つと獣人族の王都だよ?」
「もちろんです」
「表向きは吸血族に着いていいよ」
にこにこしながら答える。
「逆らったら、消すぞクフ」
ドス黒い声に変わった。
「はい」
悲鳴に近い声が闇に響く。
「その気になればマーズランドからここに魔導砲撃術を打ちこむことも可能だからね」
「はい」
「じゃ、情報を頂戴」
――それは……まさか
「聞こえないなあ? もう一回言うよ? 君たちが生業にしてる損害保険、生命保険から得た顧客情報の事だよ。それ頂戴? あ、個人だけでなく法人契約も国家間の契約もね」
――お時間かかりますが
「時間? そんなのすぐに出来るだろう? 何のための国民番号なんだ? 言い訳下手だねえ」
そう、この国は国民番号で一元管理できる。それがあだとなったのだ。
耳元でささやく。
――消されたい?
悲鳴に近い声が闇に響く。
<第六章 終>




