表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血の勇者ユーリル  作者: らんた
第六章 闇に蠢く者
79/112

第十一話

 港に戻ったらまず砦があちこちで作られていることに驚いた。


 自分と同じ特殊防御で固められた炎魔族が砂漠化された砂を外に出し、土を代わりに入れる。植樹も行う。ただし水の補給は出来ない。こうしてここに魔族の新しい領土が誕生したのだ。季節は夏になっていた。ここは雨季が無い。という事は一気に夏になるのだ。冬もさほど寒くなくまるで春のような気候なのだという。海魔族いわく亜熱帯気候というらしい。


 ただし、植えた木も汚染される。魔素は約六〇年つまり後約四〇年も汚染が続くのだ。それでも汚染された土や水を吸収するから木や作物を植えることに意味はあるのだ。つまり早い段階でここはクリーンエリアになるのだ。


 魔族は一致団結すれば強いのだ。それも恐怖で団結するのではなく、協力で団結すれば。


 「勇者、戻って来たでやんすか。ここでスクリーニングお願いしますでがんす」


 スクリーニングは厳格であった。もう鎧も捨てられる。食品なども廃棄だ。


 魔素無効化素材は極めて貴重でこれ以上鎧を増やすことはできない。


 どうにか補給基地として立派な港になった。だが……。


 「この近海の魚は汚染されて食えないでやんす」


 海魔族が試しに釣った魚をスクリーニングにかけると見事に魚も汚染されていた。


 「小魚よりも大型魚の方が汚染が深刻でやんす」


 (そうか、陸上に生物は居なかったが海はどうにか居るのか)


 「私達海魔族は海に入って戯れるのが至高なんす。でもこの海に入ったら遅効性の毒を飲むようなもんでいずれは死ぬのようもんでやんす」


 「でも、船長~。この辺の海域。もっと外の方に行けばたぶん汚染されてないはずでっせ。つまり海の領域を俺たちが取ったようなもんでやんすよ」


 「水、どうするべきでやんすか?」


 「船長、いっそのこと水を輸入するべきやんすよ」


 「たしかにここに水を持ってくれば補給基地になるやんす。でも水買って代わりに何を売るんでやんすか?」


 「船長。俺たち海魔族でっせ。遠くの海域で海洋資源掘りまくりじゃないですか」


 (こいつら、そうやって商売してたのか! 海運業だけじゃない!)


 「それはいい。海だけでなくこの大地、俺たち海魔族のもんになったに等しいでやんす」


 「出来ました」


 ゴーレムのガンムが報告する。船に同乗していた。


 「何これ?」


 ユーリルが屋根に指をさす。


 「これは半魔導体を組み込んでシリコンとガラスを入れた太陽光パネルと言う奴です」


 「えっ? ということは」


 「ここは一気に電化されます。さらにこれを設置すると」


 「これ、何?」


 「蓄電池です」


 ガンムがそっけなく回答した。


 「つまり…」


 「つまり夜も発電します。さすがに悪天候が続いたら停電しますが」


 「な、炎魔族もすげえだろ? 離島に発電所が置けるんでやんす」


 いや、すげえわ。こいつら。


 「トイレは循環式です。薬剤入れてます。水の交換は適度にお願いします」


 「すげえ」


 こうして、この大地に命が、生活が戻ったのだ。


 「勇者様。ここを補給基地にすればクレシェンテへ行けるでがんす」


 そう、南にはまるで孤島のような大陸があるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ