第十一話
港に戻ったらまず砦があちこちで作られていることに驚いた。
自分と同じ特殊防御で固められた炎魔族が砂漠化された砂を外に出し、土を代わりに入れる。植樹も行う。ただし水の補給は出来ない。こうしてここに魔族の新しい領土が誕生したのだ。季節は夏になっていた。ここは雨季が無い。という事は一気に夏になるのだ。冬もさほど寒くなくまるで春のような気候なのだという。海魔族いわく亜熱帯気候というらしい。
ただし、植えた木も汚染される。魔素は約六〇年つまり後約四〇年も汚染が続くのだ。それでも汚染された土や水を吸収するから木や作物を植えることに意味はあるのだ。つまり早い段階でここはクリーンエリアになるのだ。
魔族は一致団結すれば強いのだ。それも恐怖で団結するのではなく、協力で団結すれば。
「勇者、戻って来たでやんすか。ここでスクリーニングお願いしますでがんす」
スクリーニングは厳格であった。もう鎧も捨てられる。食品なども廃棄だ。
魔素無効化素材は極めて貴重でこれ以上鎧を増やすことはできない。
どうにか補給基地として立派な港になった。だが……。
「この近海の魚は汚染されて食えないでやんす」
海魔族が試しに釣った魚をスクリーニングにかけると見事に魚も汚染されていた。
「小魚よりも大型魚の方が汚染が深刻でやんす」
(そうか、陸上に生物は居なかったが海はどうにか居るのか)
「私達海魔族は海に入って戯れるのが至高なんす。でもこの海に入ったら遅効性の毒を飲むようなもんでいずれは死ぬのようもんでやんす」
「でも、船長~。この辺の海域。もっと外の方に行けばたぶん汚染されてないはずでっせ。つまり海の領域を俺たちが取ったようなもんでやんすよ」
「水、どうするべきでやんすか?」
「船長、いっそのこと水を輸入するべきやんすよ」
「たしかにここに水を持ってくれば補給基地になるやんす。でも水買って代わりに何を売るんでやんすか?」
「船長。俺たち海魔族でっせ。遠くの海域で海洋資源掘りまくりじゃないですか」
(こいつら、そうやって商売してたのか! 海運業だけじゃない!)
「それはいい。海だけでなくこの大地、俺たち海魔族のもんになったに等しいでやんす」
「出来ました」
ゴーレムのガンムが報告する。船に同乗していた。
「何これ?」
ユーリルが屋根に指をさす。
「これは半魔導体を組み込んでシリコンとガラスを入れた太陽光パネルと言う奴です」
「えっ? ということは」
「ここは一気に電化されます。さらにこれを設置すると」
「これ、何?」
「蓄電池です」
ガンムがそっけなく回答した。
「つまり…」
「つまり夜も発電します。さすがに悪天候が続いたら停電しますが」
「な、炎魔族もすげえだろ? 離島に発電所が置けるんでやんす」
いや、すげえわ。こいつら。
「トイレは循環式です。薬剤入れてます。水の交換は適度にお願いします」
「すげえ」
こうして、この大地に命が、生活が戻ったのだ。
「勇者様。ここを補給基地にすればクレシェンテへ行けるでがんす」
そう、南にはまるで孤島のような大陸があるのだ。




