第九話
「おい、本当にここ歩いて大丈夫なんだろうな!」
「分からない!!」
二人とも魔素を防御する鎧に身を固めてる。フルアーマーだ。面頬も特殊な素材で作られた面頬だ。もちろん己の声も変わる。翼を出すことが許されない。翼を通じて汚染されるからだ。このため移動力は極端に落ちた。
魔素計はがりがり音が鳴っていた。
(それにしてもどうしてここは砂漠なんだ? 家らしき建物も多いが……)
「ユーリル、あれ見て!!」
「これは」
それは街であった。間違いない。町だ。それどころか水道もある。それどころか王城も周りは畑の跡もあるではないか!水車もあった。
魔族も人間も生きることが許されない土地。しかしここには紛れもなくかつて人が住んでいたのだ。
「間違いない!! ここに人がいた!!」
「とりあえず地下を探そう。地下なら魔素の影響は少ない」
地下を見つけた。店の倉庫とおぼしきとこだ。しかしそれでも魔素計はがりがり音が鳴っていた。
「見ろ、水が……」
水が流れいく場所に向かって魔素計を向けると魔素計はがりがり音が鳴る。
「仕方がない」
そういってユーリルは袋の中にあるテントを張ることにした。
なんとテントにも魔素を跳ね返す素材が中に組み込まれている。
テントの中は魔素計は反応しなかった。
「ここで鎧と面頬を脱ぐぞ」
二人はため息をつきながら鎧と面頬を脱ぎ普段着に戻った。
調理は簡単なレトルトパックである。吸血族が発明した輸血パックはこんなところにも応用できるのだ。
火を消すと二人は再び闇に蠢く者となった。
「万が一ここに魔獣が居たら困るからな。後は妖魔族もだ」
「分かってる」
「明日、図書館を調べてみるか」
「うん」
なぜ彼女がここに派遣されたのかが分かる。ここなら戦う必要がないからなのだ。