第七話
海魔族が動かす船に乗る。
(そうだった。自分はなんで海洋に出なかったんだ?)
それは海魔族の支配下に置かれてたから、つまりもうこの世界の半分以上は魔族の支配下だったという事を忘れていたのではないか。
そして今度の相棒。
「サラです。よろしくお願いします」
今回からカラは同行しない。回復魔法を身に着けたサラがお供するのだ。
元々ヴリトラ村に居た人間だ。ヴリトラ村の住民はクローフィー城に攻めて返り討ちしたことを思い出した。そして自分もこの時初めて敵対した人間に吸血したのだ。サラもその時吸血鬼に変貌した元人間の一人だ。
「見えたぞ~!」
海魔族はそういえば人間とも通商してたんだった。
どうしてこの事実に気が付かなったのだろう。
「勇者、気を付けてくだせえ。この辺の砂漠はすべて魔素中毒地域ですぜ」
「えっ!?」
「妖魔族が一瞬で滅ぼした砂漠の国でさ。もちろん、緊急時に着岸出来るように港は海魔族が整備してるんですがね」
烏賊と人間が一緒になったような海魔の船長が答える。彼の名前はヒグラという。
「ありがとう」
「これ『魔素計』でがんす」
魔素計が手渡された。
「お嬢さんも気を付けて」
「はい」
「血液ボトルは忘れてねえでやんすか?」
「大丈夫だ」
そう、ここは人間が居ない。人間の血液は水以上に大事なのだ。
「スザールの港に着岸!!」
「「着岸」」
「エルグに到着しましたで、勇者。あっしらはここで待ってるでごんす。でも一月も来ない場合は帰らせてもらうでごんす。待ってる間はここの補給施設を直すんでさ」
そう、そして灯台も重要施設である。
「ここは海に人工島を作って魔素を消してから港を再構築したでごんす。魔素が入った砂が入って来ない様に……城壁を作ったでごんす」
船長が指をさすとたしかに城壁が。そして門がある。
「この門でスクリーニング検査をやんるでやんす」
船員が張り切って言った。
「サラ、行こう。大丈夫。冒険は俺が全面的に支える」
「よろしくお願いします!」
砦の扉は二重になっており中は一種の城門だ。
「帰ってくるときはここでスクリーニング検査するでやんす」
「魔素を完全に防御する鎧に着替えたでやんすか?」
「大丈夫だ」
「最後に面頬を」
二人は面頬を付けた。顔に汚染物質が付かないようにだ。
「戻ってきたらこの城門を後ろに下げられるよう海魔族の土地として開拓するでやんす。だから土を大量に運ぶ船が到着するでやんす」
「へえ」
「勇者、気を付けて」
その言葉を聞いて「大丈夫だ」と言った。吹雪の声に変っていた。
二人は外側の城門を開けた。




