第五話
「ここが妖魔族の国」
氷魔族の国とは違う高山地帯だった。国と言っても自称国家だが。季節も冬に戻った。
「氷魔族と違うね」
雪に覆われているわけでは無かった。ところどころに雪が残っているだけである。しかし雲の上にあるような世界であることに変わりはなかった。
「国と呼べるかどうか分からないけど……これが、君が黙ってた事なんだね」
「そう……」
「危ない!!」
二人は電撃をよけた。ユーリルがかばわなければカラは即死だった。
「ここは妖魔族の国、お前らここに何しに来た!」
明らかに妖精族の風貌が残っている。しかし同時に筋肉質でたくましく魔力が漲っていることが分かる。
「妖魔族の王にお会いしたい。我は吸血族の勇者、ユーリル。そなたの名を聴きたい」
「お前に名乗る義理なんてねえな。お前が吸血族の王を大魔王に担ごうとしてるのか」
「違う!! 魔王ではない。国際会議を作って協調路線にする」
その言葉を聞くと顔が変わった。
「ほぉ。吸血族は大魔王の座を捨てるというのか。じゃあ、俺たちが魔王になっていいのだな」
会心の笑みを浮かべる。
「マーズランドの魔王に」
――超雷呪!!
それは勇者が解き放つ雷魔法とは比べ物にならない!!
勇者の悲鳴がこだまする。
「まるで、一人で一国の軍隊並みだぜ」
(吸血族になってなかったら即死だぞ)
「だめ、ユーリル!! ここは引いて!!」
そう言うとカラは転移魔法を唱えユーリルの手を握った。
二人は瞬時に移動した。
妖精族村の門の前だった。
焼け焦げた勇者を目にして門番は驚いた。
「だれか、勇者を!!」
カラが必死に門番に助けを求めた。




