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吸血の勇者ユーリル  作者: らんた
第六章 闇に蠢く者
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第五話

  「ここが妖魔族の国」


 氷魔族の国とは違う高山地帯だった。国と言っても自称国家だが。季節も冬に戻った。


 「氷魔族と違うね」


 雪に覆われているわけでは無かった。ところどころに雪が残っているだけである。しかし雲の上にあるような世界であることに変わりはなかった。


 「国と呼べるかどうか分からないけど……これが、君が黙ってた事なんだね」


 「そう……」


 「危ない!!」


 二人は電撃をよけた。ユーリルがかばわなければカラは即死だった。


 「ここは妖魔族の国、お前らここに何しに来た!」


 明らかに妖精族の風貌が残っている。しかし同時に筋肉質でたくましく魔力が漲っていることが分かる。


 「妖魔族の王にお会いしたい。我は吸血族の勇者、ユーリル。そなたの名を聴きたい」


 「お前に名乗る義理なんてねえな。お前が吸血族の王を大魔王に担ごうとしてるのか」


 「違う!! 魔王ではない。国際会議を作って協調路線にする」


 その言葉を聞くと顔が変わった。


 「ほぉ。吸血族は大魔王の座を捨てるというのか。じゃあ、俺たちが魔王になっていいのだな」


 会心の笑みを浮かべる。


「マーズランドの魔王に」


 ――超雷呪!!


 それは勇者が解き放つ雷魔法とは比べ物にならない!!


 勇者の悲鳴がこだまする。


 「まるで、一人で一国の軍隊並みだぜ」


 (吸血族になってなかったら即死だぞ)


 「だめ、ユーリル!! ここは引いて!!」


 そう言うとカラは転移魔法を唱えユーリルの手を握った。


 二人は瞬時に移動した。


 妖精族村の門の前だった。

 

 焼け焦げた勇者を目にして門番は驚いた。


 「だれか、勇者を!!」


 カラが必死に門番に助けを求めた。

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