第二話
スレジア五世は近隣の村で四肢が四散していた。遺体を王族が持ち帰る。なぜ一人で逃げようとしたのであろうか。
スレジア五世の遺体を見て王宮は大混乱に陥いり……嘆き……悲しんだ。
吸血鬼や獣族、竜族が攻め込んだ時は既に無血入城となった。
「これが、水魔族や氷魔族を裏で支援した者の末路……」
ユーリルは哀れんだ。
「これって、さらに裏に誰かが居るって事ね」
カラは当然裏に居る者を疑った。
「ということはまさか妖精族?」
(いやいや、まさか)
「そんなわけないでしょ?妖精族は平和主義なのよ」
海魔族は二度と他の魔族に迷惑をかけないことを条件に友好関係を築くことを約束した。
なんと次代の王スレジア六世はまだ十四歳である。
名誉回復と財政再建がこの国の必須となった。
もちろん吸血族が持つ医療技術も導入となる。
電力も必須であろう。
獣人族は海上火災保険の提案を行っている。本当に彼らは商売人だ。
(こうして世界は繋がっていくんだな)
「でもさ……大魔王になったらまた骨肉の争いなんだよね。だって、人間界だって大帝国を築いたって勝者必衰だよ」
「……」
「そうね、勇者……なんかいい案ない?」
「あるっちゃあるけど非現実的だぞ」
カラをじっと見つける。
「国際会議を開く」
(!?)
「帝国は脆いんだ。だから恐怖で支配しても瓦解する。でも国際会議で協調路線にいけば」
「それ、畏れ多くも言ってみる?」
「今はまだやめてくれよ。俺が殺されそう」
「了解」
そんな時に海魔族の兵士が来た。
「国葬と戴冠式が同時に行われます。吸血族の皆様もご参加願います」
(そうか、国葬か)
◆
まず遺体は四肢が四散しているので見せられない。なので柩に入れて首都を一周してから火葬される。海魔族は本来……海に埋葬されるのだ。なんと魚たちに遺体を食べさせる。それが次の海の恵みになるのだという。しかしスレジア五世は違う。火葬となったのだ。裏で帝国と内通してた罪は重いということで業火の火で焼かれることになる。そのうえで咎人として墓碑が立つ。墓碑には本来は遺品しか入れないという。しかしスレジア五世の墓は『過ちを犯した王、ここに眠る』と刻まれた上で遺骨も墓石の下に置かれることとなった。
次に急遽戴冠式が行われることとなった。もうスレジア五世は居なくなったので副官が行う。ユーリル達は複雑な気持ちで戴冠式を見て同じコースを新しい王が挨拶することとなった。ただし普通の戴冠式と違うのは後ろにユーリル達がいることだ。自分たちの国は誤ったことを行ったのだと国民に知らしめるために。そのため無言の戴冠式となった。おめでとうと声をかける兵士や国民はほとんどいない。
それが新生海魔族のスタートとなった。春の海風が彼らを包んだ。




