第十一話
核の供給を絶ってしまえばこちらのものだった。
氷魔族はもともと個体も少ない。
氷魔族の王国ハイランドの占領はあっという間だった。
氷魔族の女王はサヴァという女王だった。雪の精霊だった。
占領軍はこれらを見て驚いた。
極北以外の地では氷魔族は地下に移動してるのだ。
また春が来ると極北の地に移動するようにしてるのだ。
極北の地は貧しかった。というより春が来ると魔獣以外ほとんどいない。
人間もまれだった。
「ここも水力発電作ろう」
「ユーリル様!!地下を…地下をご覧ください」
兵士に連れて行ってもらうとそこは巨大な冷凍庫だった。
そこには獣人族の冷凍死体がフックになってぶら下がっていた。竜族のもあった。
食肉の解体現場もあった。そうやって氷魔族は敵対する魔族を食っていたのだ。
あまりのおぞましさに吐しゃ物を吐く獣人族や竜族の友軍たち。
それらの死体は丁重に葬ることにした。
「カラ、念のために言うが吸血族が他の魔族に牙立てても吸血鬼にはならないんだよな」
「ならないわ……なるのは人間族だけよ。でもね、魔族が他の魔族の血肉を食うとパワーアップ出来る事があるの。そう、私たち吸血族が竜族の血を分けてもらってパワーアップ出来るように。たぶん氷魔族は獣人族や竜族の血肉がそうなんだわ」
(それでも復讐の連鎖は防がねばならない!!)
ユーリルが下した決断は隷属でも領土割譲でもなかった。
「ただし! 発電所の電気から一家庭当たり月額一〇〇円を賠償金として徴収するぞ。二〇年間だ!」
サヴァはこの声にびっくりした。
「妾を殺さぬだと……?」
「ああ、収監もしねえよ」
「二度と他の魔族を冷凍にして食う事をしないという約束でな。もちろん罪は償ってもらう。でもこんなのはお互い様だからな」
サヴァは降伏条約にサインすると規約通り白旗を掲げて城下を後にした。
<第五章 終>




