第十話
秘密の養殖場となっている洞窟はすぐに見つかった。竜族の炎ですべて核を消滅させた。
――ありがとう……。
――僕たちは救われた……。
――もうつらい思いしなくて済む……。
救いの声がこだまする。
近隣の海岸に竜族のものと思われる宝石が見つかった。アーク・フーのものだった。
遺体は見つからなかった。遺族に伝えるしかない。
吸血族、獣人族、竜族、炎魔族の意志は固まった。
水魔族の首都を落とすと。
いくらスライムが分裂できるといってもそこはスライム。炎で駆逐されてしまえば大したことない。
水の精霊も撃破する。
王城になだれ込んだ。
「いたぞ~!」
もうユーリルには見慣れた光景だ。
水魔族の王、ヴァダラムは地下水路の隠し部屋に居た。
出口はもちろん塞がれていた。
「俺はいろんな種族にこの話を言ったが水魔族の殲滅を求めるものではない。従属を求めるものでもない。だから他の種族の攻撃をやめてくれ。水妖達の健康管理もしっかりする」
ユーリルが見た先は淡水で生きる魚人や精霊であった。
「スライムの健康管理もする。HPの管理もする。ただ、毒をまき散らすのだけは許さん」
「儂はまた負けるのか。所詮、スライムなのか!!」
涙を流す。必敗の種族の涙。
「違う!」
勇者は王を睨みつけた。
「負けたのは己の意志が弱いからなんだよ!! 国民を豊かにさせた王が真の勝利者なんだよ!」
ヴァダラムは王はいまいち意味が分からないようだ。
「ここに水力発電を作りたい。共存共栄で生きたいんだ。おっと、金は頂くぜ? そうすればここはエネルギー輸出大国だ」
「お前はそうやって敵の国王を口説いたんだな」
それを聴くとユーリルは三日月の笑みを浮かべた。
「そうだ。俺は吸血鬼だからな。養分は頂くぜ。ただし、相手を不幸にさせないという条件でな」
「そうか」
それを聴くとヴァダラムは白旗をもって王城を出て城下町を歩く。王で無くなった者はただのスライムナイトでしかない。ヴァダラムは今後どうやって生きていくつもりなのか。
城下町の住民は白旗を掲げる王を見て嘆いた。王は城下を去っていく。
「復興しなくては。竜族や獣人族のように」
カラは占領後の仕事を心配していた。
「カラ、ヴァダラムがリー・ファンのように幸せな余生を送れるようにしてくれ」
ユーリルは優しい。こういう時はなぜか優しいのだ。
「俺たちは勝ったぞ~!」
ユーリルの声を聴くと友軍は一斉に雄たけびを上げた。