第八話
吸血族、獣人族、竜族、炎魔族は極力海運を使わないようにした。
このため竜族の空輸が威力を発揮していた。
敵地に踏み込むのは危険と思いながらもアーク・フーは思わず養殖場に降り立った。
そこは海魔族が支配する島だ。割と水魔族の領土に近い。この島の洞窟の中にそれは居た。海水も入ってくる。冬季は雪こそ降らないものの海が荒れてしまう。
その竜族のアーク・フーが見たものに異様な光景があった。
そこには眼が付てる核を大量に養殖していたのだ。
「これは……」
乱気流を避けるためにあえて相手の領土に入ったがまさかこんな光景が繰り広げられていようとは。
「この核を埋め込んでいけば、水魔族は増殖が容易に可能」
「……ロシテ」
なにかが聞こえる。
「……コロシテ」
「……コロシテクレ」
「オマエリュウゾクダナ。ソノホノオデ」
なんと海難事故で襲われた人間の魂を使っているではないか。人間の魂を写すことまで行っていた。そうか、だから大量の養殖スライムに魂を入れる事が出来るのか。そうすればスライムの知性も上がる。スライム完成時には人間だった頃の記憶が消えるという優れたアイデアと高度な技術だ。魂写しだなんて相当高度な魔術師がいるのだろう。それもおぞましい実験を繰り返しながら完成したに違いない……。
単にここは水魔族の核を増やす場所じゃない。そう、人間の魂を使って核を増やしているのだ!
「嘘だ……」
たじろいだ。
「うわああああ!」
アーク・フーは痛まれなくなって飛び立った。
自分は魔族で人間とも敵対することがある。それでも限度というものがある。
逃げた。全速力逃げた。
「ぐあっ!」
後ろに強烈な痛みが。毒矢だ。ばれたのだ。海から翼をたはめかせ飛んでくる海鳥人がいるではないか! 海鳥人は獣人でありながら海魔族に属することになった種族である。ゆえに獣人族と海魔族との橋渡しもおこなうしついこないだまで同盟関係だったのも海鳥人の存在が大きい。
「見たな?」
――海鳥族!!
「領空侵犯はいかんな! 処刑せねば」
そういうと巨大な氷の刃が次々振って来る! 眼をやられ、蛇腹をやられたアーク・フーは海に転落する。
(せめてこれを!)
それは輸送するはずだったゴム製品だった。そこに竜族の宝石を入れた。
(異変に気が付いてくれ!)
海魔族に属する海竜以外竜族であっても海に転落すれば命はない。アーク・フーはやがて溺れていき、海の中に沈んでいく…。




