第七話
ガム、ギム、グム、ゲムが炎魔族の国フレイムに帰った。みんな総出で迎えてくれた。
ユーリルもカラも同行した。
「へえ、これが炎魔国の首都ロックランドか」
勇者も初めて来た。
「本当に地熱発電で動くんだね」
カラも仰天する。
「ここは炎魔族以外は入れない場所が多いから気を付けろ。骨ごと溶けるぞ」
そう、ガムが言う通り少しでも道を外れたらアウトだった。
しかもこの道はわざわざ他の種族のために用意された道なんだそうな。
「送電線はゴムじゃなくてここでは岩で固めてる。ゴムじゃ溶けるからな」
ギムはいつも寡黙なのに母国に帰って来れたのがうれしいのか上機嫌だ。
「でも国外では話は別だ」
ゴレ国王に謁見する。王城は何もかもがゴーレムサイズである。もちろんゴーレム以外の種族も居るが……。
「この度は本当に感謝する」
頭を下げる国王。いや、困るんだけど。玉座も質素だ。なるほど人間界の王様もここに攻めろとは言わないわけだ。謙虚だ。
「いいえ」
国王様、頭をあげてください。
「ゴムは竜族が空輸するので着陸地点も用意お願いしたい」
「承知した。というか既にある」
用意がいいなあ。
「我々は全面的に氷魔族や水魔族との戦いに協力する」
「本当にありがとうございます」
新しい国書を受け取った!
「宿は用意してある。そこで泊っていただきたい」
謁見を終えて城下に出ようとする。が、兵士らがこちらをにらみつけている。
ユーリルを見る目はやはり冷たかった。そりゃそうか。なんてったって人間時代は一回だけゴーレムやガーゴイルを撃破していったのだから。
街に行くとびっくりすることがある。なんと温室があるのだ。
「中は楽園ね」
カラはびっくりしっぱなしだ。
「地獄の上に楽園が……」
そう、この国は地獄の上に楽園を作ったのだ。
光熱費はほぼタダである。電気も水道も。ガスの代わりに地熱を使う。
ゴーレムやガーゴイルはきれい好きだ。シャワーで汚れを落とすのだ。
(そうか、だから岩で出来た魔族なのに汚れがあんまり目立たなかったのか)
ゴーレムやガーゴイルに命を吹き込む場面も見た。炎の精霊を集めて核にし、自律移動出来るようになる。だから、炎魔族は絶滅しにくいのだ。
人間界の事をよく知っていた。なにせ、人間が作った石像に核を埋め込んでガーゴイルにしていたのだから。
「ここに薬局置いたら売れるのかな?」
ユーリル、まさかの商売魂発揮である。
「さあ、岩に効く薬じゃないし……見て、セメントで補修してるよ」
彼らにとって薬とはセメントなのだ。鉱山も多数持っていた。もちろんセメント鉱山もだ。どうもこの国で薬局を開くのは難しい。
宿はなんと逆に冷房まで効いていた。しかも何もかもが広い。
「どういう事……。冷房……」
店主に聞くとボイラーというのは暖房だけでなく冷房まで出来るというのだ。
勇者は吸血族になって……己の見る世界の狭さに恥を覚えた。
もちろん炎魔族すべての討伐は命じられてない。それでもユーリルたちは草原で炎魔族と戦ったことは事実だ。
彼らは人間達よりも文化的で高度な生活を送っていたのだ。
巨大なシャワー室がいくつもあった。自分の岩を高圧洗浄するためのお湯である。自分にそれをやってしまうと命を落とすためちゃんと我々のために浴槽を作ってくれたのだ。しかも男女別で。人間サイズや吸血鬼サイズがないのでわざわざ国王が別の種族のための浴室を作ってくれたのであった。
食事も用意されていた。彼らにとって食事とは炎の精霊をチャージすること。しかし他種族は違う。そこでちゃんと強火で焼いた牛肉や野菜炒めなどが用意されていたのだ。水洗トイレも完備されていた。合併浄化槽でちゃんと水を浄化してから流す。
「すごい」
寝室も他種族用のベッドが用意されていた。




