第六話
いくら吸血族は飛行が出来ると言っても、炎魔族がスタミナがあるとは言っても山下りは山下りでしんどい。獣人族の国は山岳国家である。積雪のあった地域から紅葉が発生する地帯となりやがて夏となった。
しかも、獣人族の国の南側をユーリルは初めて訪れた。
「ここは、常夏だね」
そう、気候が変わったのだ。
「植物もまるで違うわ」
植生が変わって来た。そして蒸し暑い。
そして平地の町ドッカーに泊る。
ここは主に犬人族が住んでるようだ。
もう海の音が聞こえる。
炎魔族のエネルギー補充は街の外で行った。彼らは大きすぎて宿屋に入れない。
「この国の宿屋もミニサイズなんだね」
そう、炎魔族の宿は大きいらしいのだ。
次の日、リゾート地らしい一角にサニアは居た。サウザンド・ガーデンという街に居た。
突然の訪問にも関わらず喜んで迎えてくれた。
炎魔族はサニア宅に外で待機だ。
それと案外塩は大敵らしい。鉄ほどではないが徐々に侵食していくのだそうだ。
「まあ、まずはお茶会といきましょう。まず、サウザンド・ガーデンにようこそ」
出されたのはアップルティーだった。
「ここはゴムだけじゃない。紅茶の産地なの」
「へえ」
「ドラグリアやブルートでは作りづらい紅茶もここでなら余裕」
お菓子も多数あった。チョコレートクッキーにポテトチップスであった。
「ちゃんと作法を身に付けたのね。ユーリル。偉いわ」
「ええ……」
ちょっと照れてしまった。
「ここなら南洋植物から新薬が作れるかもしれないわ。ここに工場誘致お勧めよ」
「なるほど」
カラが思わずうなった。
会話が弾む。そして今回のスライム襲撃の事を話した。
思わずサニアが切り出した。
「たぶん海魔族が後ろにいるわ」
「えっ?」
「たぶんね。水魔族の核を海で養殖して育てる。そうすれば陸地でも大活躍」
「どうしてあなたを追放したのにこんなに情報を」
「さあ……?」
「私はね、見たくなったの。魔族同士が争う世ではなく共存する世を。もちろん人間とも」
「そうですか」
長い沈黙が流れた。
「私が作った生命保険や損害保険制度はうまく行ってるかしら?」
「行ってますよ。特に兵士に大人気です。万が一死んでも子供を路頭に迷わすことはないですから」
ユーリルは本当のことを言った。
「火災保険も人気です」
カラが付け足した。
「ゴム園、この辺の取っていいわ。その代わり貴金属お願いね。工場もね」
ゴムは炎上の危険性がある。火災保険が売れるから、だそうだ。本当商売人だな。
「ありがとうございます」
「今、これを書くわ」
出来上がったのは「推薦状」であった。
「これを現国王に。それと勘違いしないで。私は院政を敷いてるわけじゃない。影響力なんてないわよ。推薦状を破り捨てられる可能性がある」
「それでもかまいません」
「うまくいくといいわね」
ユーリルたちは南の果てまで行って目的を達成した。