第五話
「えっ!?こんなにスライム居るの?」
城を出るとスライムだらけだった。
(吸血族の領土には少数の魔獣しかいなかったのに)
それだけではない。魔獣を毒で犯し、酸で焼き殺して自分の体に取り込んでるではないか。
「スライムってこんなに増やせるっけ?」
カラに真顔で聞いた。
「分からない。分からないわ。言えることは核となる部分を増やしてるやつが居るって事よ!」
六人は業火でスライムを葬りながら獣人族の王城ナハルニヤへ向かう。休むときはユーリルやカラの炎で四人の魔力をチャージしていく。もちろん結界を張ってるからスライムたちも戦う事は出来ない。
テントを張り、六人は談笑する。
やがて獣人族の領土グリモスに入った。山岳地帯に入ると冬なので積雪している。冬の方が戦いがつらかったかもしれない。雨季に戦ってよかったのかも。
ここはまだスライムが到達してないようだ。王城にようやくたどり着いた。いつ来ても登山はしんどい。
国書を見せ、ケーブルの原料となるゴムを見せる。
「いいでしょう。私達も電気が欲しいというもの」
即快諾であった。狐人のサニアの後を継いだ国王はクフという狼人の王であった。なんか高貴な男性という印象だ。
「サニアは元気にしているか」
ユーリルが聴くとサニアは隠居生活を楽しんでいるとのこと。しかも今回求めるゴムの産地に近い場所で隠居生活してるようだ。
炎魔族の対価は貴金属であった。獣人族は金融立国にとって重要な資産である。
用事を済ませると王城はすっかり変わっていた。吸血族の工場が新設されていた。いくら金融立国と言っても製造業がなくては心細いというもの。そしてこの工場があったからこそ全生産ストップという最悪の事態が回避された。
「ここにゴム工場も作れば獣人族はもっと豊かになれるね」
ユーリルはもう国造りしてるようなものだ。
「そうね。あとは水力発電ね。ここは山岳地帯だし」
水力発電。そうだ。何でこの国はそんなもんすら作らなかったのだろう。豊かになれば国は侵略してこない。貧困が戦争の原因だったり政変の原因なのだ。
「じゃあ、次はゴム園を見てサニアに挨拶していくか」
そう、サニアにユーリルは会いたかった。