~序~
「気にくわないね。このまま大魔王の座を吸血族に取られてしまうのだろうか」
そう、大魔王の称号。それはすべての魔族を統べる王の称号。有史以来「始まりの地」で妖魔族が手にした時以来大魔王の座を取った魔族の王は居ない。それも一代限りの王だ。クリルタイで決定した。
「おそらくは…」
「海魔族はあの時獣人族と組んで吸血族を殲滅するべきだったのか」
「しかし、スレジア五世様。それでは海運収入が途絶えてします。人間の力だって侮れません。それに我々は陸地に上がることが困難です。しかも彼らの医療水準は高度です。医療物質を絶たれてしまったら我が国も大ダメージ。それを判断されたからこその中立でしょう」
「そこだ。どうしよう」
王は悩んだ。
「水魔族と氷魔族と手を組むか」
「王、おそれながら手遅れのような気がしますが」
「手遅れではない。奴らの工場を見て見ろ。みんな水で動いておる」
「?」
「飲料水だけではないぞ。洗浄から農地から何からまでだ」
――そうだよ。なんでこれをしなかったのだろう?
小声で副官に言った。
「吸血族の上下水道を攻撃する。ただし我々は陰で動くのだ」