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吸血の勇者ユーリル  作者: らんた
第四章 死霊族との戦い
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第四話

王城に戻ってカラに聞いた。


『死魔消滅』とはどんな呪文なのか。


魔力より『心』が問題なのか。


そして何がコツなのか。


カラは一通り聞いてからこう答えた。


「勇者、これ貴方にとってかなり厳しい修行よ」


「そっか」


「明日私も行っていい?」


「ああ」


「出来れば教会にも行ってほしいの」


(ん?なんで?)


「せっかく先輩がいるんですもん。歌声をただで聴くチャンスだわ!!」


眼が光っていた。


「おいおい、それが目的なんじゃ」


「ちっ、違うわ!」


「聖歌って心を神聖にする効果があるんだよ。それに私もお茶会に参加したいな~」


(仇敵の心を覗くチャンス!)


◆◆◆◆


翌日お茶会を開いた。作法はある程度身に付いていた。


「試しに『死魔消滅』の魔法を教会で唱えてみる?」


「うん」


言われるがままに王城にある教会に行ってみた。そういえば王城攻略の時になんでここに教会があるんだと疑問に思った場所だった。


「魔族なのに人間の教会があるって変でしょ?」


「言われてみれば」


「でも元人間の吸血鬼で罪悪感を抱く人はここに訪れるの」


そう……なのか。


「勇者は違うけど元人間の吸血鬼が人間を吸血することに罪悪感を抱く人は居るし吸血鬼だって祈りをささげたいの」


元人間に人が多いから信仰も同じって事か。


「それはそうと呪文を唱えて魔法陣を発動してみて」


勇者は言われるがままにやってみた。が、発動しない!!


「この魔法陣は人の心の痛み、特に怨念を取りもどす鍵を解除して発動させるの」


歌姫、そうなのか。元・暗殺者だった俺には難しいな。


「あとは魔力がものを言うから勇者の場合鍵を解除出来るかがすべてなの」


カラが発動すると青い炎のような波動が手から出た!


 歌姫のミラも発動すると青い炎のような波動が手から出た!


 「これが『死魔消滅』よ」


 だからもっと人の話を聞いて、もっと心をきれいにして発動させるの。


 「最後に私の歌を聴いて頂戴?」


 ミラは蝙蝠の翼を出して歌ってみた。すごい。これが歌姫の声。劇場で聞いた声と同じ。


 「これが贖罪の歌。勇者も練習してみる?」


 「聖歌とお茶会のコラボね!」


 やっぱりカラ、言うと思ったぞ。


 女性とこんなに付き合うのがうれしくてはずかしくて苦痛に感じたのが勇者がこれが初めてであった。


「じゃー、次は慰霊祭ね」


(慰霊祭?)


「慰霊祭って何だ?」


 ユーリルは紅茶飲みながら素で聞いた。


「慰霊祭って夏に行われるんだけど……死を思うために一分間石棺に入って祈るお祭りの事。吸血族は人の命を奪う。だから奪われた人の気持ちも知りなさいって意味で行われるのと『あなたはいずれ必ず死ぬから死ぬ準備はいつでもしておきなさい』というお祭りよ。墓参りと一緒に行うの」


 カラの説明に奇習だなと思った。


 (もしや、吸血鬼が石棺に『常時』に入ってるってデマはそこからか?)



 街に出店が多数出る中……墓地に行くと当然のことながらがらっと空気が変わる。みんな墓の前で祈っているのだ。ユーリル達も祈りを済ませる。墓地の隣にある教会に行く。教会の地下にそれはあった。墓地で祈りをささげた後に行う石棺儀式だ。ユーリルは周りの視線が痛かった。この儀式は強制ではないがけっこう国民の間では行うのが多数のようだ。


 ――あいつにも「心」ってもんがあるんだな


 ――もともと人間だから、心に傷ってやっぱ勇者でもあるんだね


 ひそひそ話が聞こえる。やがて自分の番がやってきた。吸血鬼の牧師が宣言する。


 「石棺に入って祈りなさい。死想メメントモリ


 ユーリルは石棺に入って一分間祈った。石棺から出してもらうとカラも同じことをやっていた。


 カラもやがて出て来た。ミラも石棺から出て来た。


 「さ、行きましょう」


 カラが言う。


 「雑音は気にしない」


 ミラの声は本当に救いになる。


 「次のお茶会でちょっとあなたに言いたいことがあるわ……」


 (カラ、どうした?)

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