第一話
雨季が終わり夏になった。セミの声が城にも聞こえる。もっともここは冷房が効いているから涼しいのだが。すげえぜ、吸血族の文明水準は。人間の王城では考えられない。そんな中勇者は謁見室に呼ばれた。
「ユーリル、入ります」
「入れ!」
衛兵に呼ばれてはいって来たのはいつもの姿の王だ。
「ユーリル。いよいよだな。真の敵と戦う時が来た」
ゼーマ王が言う。
「はい、あちこちで骨をかき集めてると聞きました」
従者の声が謁見室に響く。
「ユーリル。吸血族にとって真の敵は死霊族なのだ」
「えっ?」
「もちろん人間にとっても真の敵だ。獣族や竜族などよりもな」
(真の敵!?)
「先に言っていくが吸血族は死者じゃないし、不死でもない。昼間は起きてるし寿命もある。さほど人間と生活は変わらん。だから人間社会に潜り込んで擬態できる」
「その証拠に吸血族の墓に年号が刻み込まれてるだろ」
ザーグ四天王が鉾を持ちながら言った。
「吸血族にとって人間の血肉を求める死霊族は真の敵」
シドン四天王は腕を組みながら言った。
「人間を滅ぼした後に核を埋め込み、不死にさせる。獣族でも同じだ」
サーミラ四天王が言う。実力派の四天王だ。
「骸骨のままで生きていればいいのだが奴らはかつての血肉を蘇生するべく人間や獣族を襲う。だから竜族や獣族にとっても敵だ」
(そんな連中が……いたなあ。雑魚だけど)
「どうやって死んだ存在が再び血肉を」
ユーリルは聞いた。
「核が骨に魔力を行き渡らせるのだ。そうすれば腐肉になるが血肉を再構成できる」
サーミラが説明する。
「ユーリル。今度の戦いは融和ではない。どちらかが滅びるかだ……だから、そなたを吸血族にしたかった。大事な、戦力だからだ」
(それが俺を吸血鬼にした真の目的!?)
「ユーリル。体を休めて次の戦に備えてほしい」
「はい」
「そのために君には学校に入ってもらう」
「ええっ!」
「科目履修生夏季集中講座で通学する。費用は国持ちだ。安心しろ。ちょうど夏だ。学生は国家試験対策で勉強するもの以外誰も居ない。夏休みだしな。」
(いや、金の問題じゃなくて……)
「死霊族はその名の通り死霊だ。聖属性魔法で核を破壊するしかない。じゃないと何度倒しても、骨を粉々にしても生き返る」
(そんなことは知ってるよ)
「聖属性魔法を習得したら、一気に攻めるぞ。大丈夫だ。元人間の勇者なら適性もある」
「はい、シドン様。承知しました」
(学校……)




