第十話
<吸血族と竜族が敗北の味をかみしめているその頃……>
首都ドラグニアから西……ドラグニアと人間の国境に近い山の麓。雨が激しく打ち付ける。
ここに隠居生活を送るものが居た。
魔力を使って樹を切り倒し、魔石を使って快適な電化生活を送っていた。
浄水器もあって水もきれいだ。
そんな中、ここに訪ねて来る者が居た。転移魔法で魔法陣に現れたのだ。転移魔法から現れたのは黒い影だった。
「お前か……ということは……お前には迷惑かけるの」
影がこの生活を提供したのだ。こっそりと。この転移魔法は影しか起動できない。
「いいえ。だって御隠居様は無一文で城を出るから。餓死しますよ」
「本当に死ぬつもりじゃったよ」
影はその言葉を聞いて悲しんだ。影は頭巾を取る。
「ところでご報告ですが……吸血族が獣人族のゲリラ戦によって負けました。このままですと両国とも占領されてしまいます」
「わしのせいじゃのお。じゃが秘策はあるぞ。浮遊魔法を竜に利かせて空をより高く飛ぶのじゃ。さらに高く飛べば対空砲は届きにくい。そして、一気に首都に爆弾を落とすのじゃ。そう……万が一敵に対空砲奪われた時の事まで考えていたよ」
「ご隠居様…」
「フールイはよ戻れ。お前は臨時竜王じゃろう。わしの真の影になれ」
「はっ!」
転移魔法によってフールイが消えると翁は泣いた。しかしその悲しみは雨音でかき消された。
◆◆◆◆
フールイはさっそくこの案をシドンに提案した。
「空爆か! それはいい。さっそく実行するぞ」
「借金で買った武器の残りを処分するという意味もあります」




