第七話
獣人族の従者が謁見室に駆け込む。
「ご報告いたします。たいへんです、ドラグリア軍・ブルート連合軍に負けました」
「へえ、本性現すとはこのことね」
玉座に座り団扇で仰ぎながらサニアは動じない。質素な服だが王の威厳をどこか感じさせる。
「吸血族はかつての敵国竜族のドラグリアに打ち勝った国です。我が国に勝ち目はないです」
犬族の副官が警告する。
「抵当も取れないですよ。貸し付けが焦げ付きます」
「ふっふっふっ。では、次の手を発動させるわ」
「いったい、何を……」
「経済テロよ。では副官に命ずる。先物取引で穀物を買い占めろ」
団扇で仰ぎながらサニアが言う。余裕の表情だ。
「……」
横に居た副官は震えていた。
「餓死させてやる」
「りょ……了解しました」
「うふふ、これで債権回収分はばっちりね。ところで海上火災保険の収益はどうかしら?」
「抜群です。海魔族の船の積み荷等、保険料利益でカバーしています。逆ザヤも起きてません」
「そう……。じゃあ次は命にも保険を掛けようかしら」
「女王様?」
副官は一瞬女王の言っている意味が分からなかった。
「命を金に換えるのよ。ばくちを遊び感覚でやってたかいがあったわ。戦死率や障害率が計算で来たんですもの」
副官の震えが大きくなった。
「副官! 今度は生命保険会社を作れって言ってるのよ」
「りょ……了解しました!!」




