第一話
雨が降る中で王城の執務室で叫び声が聞こえる。
「なんじゃこりゃ!!」
四天王の一人シドンが驚く。シドンはブルート国から派遣されドラグリア国の顧問になっている。そして財務関連の公文書を見て驚いた。
収支が真っ赤なのだ。債務超過になっていた。これが企業ならたぶん倒産だろう。
ドラグリア国は借りたお金を使って全部武器を買っていたのだ。
もちろん今や漢方薬の売り上げは吸血族、すなわちブルート国のもの。
もう、この国にある売り物はせいぜい酪農品と漢方薬の原料ぐらいだ……。
「破産する……」
そして契約書を見て凍りつく。
そう、母国と同じ契約書。しかもやっぱり担保付である。
「返せない場合は獣人族の領土とする」とあるのだ。
かといってブルート国も再建の真っ最中。とてもよその国の支援なんて出来ない。
「返せない……」
シドンは従者をにらみつける。従者がひっと悲鳴を上げた。
「フールイ呼んで来い!!」
◆
フールイは慌ててここに来た。
「臨時竜王フールイこちらに」
「お前たちは何を考えているのか!! これでは仮に竜族が勝っても財政破たんするではないか」
「実は勝ったら吸血族の領土の一部を獣人族に譲渡するつもりだったのです」
「な……ん……だ……と」
シドンの顔が真っ赤になる。
「もうしわけございません」
「ざまあねえな、フールイ」
財務室の扉を開ける者がいた。
「リー王子!!」
「ほう、あなたが次期竜王」
シドンは少し感心する。少しは強そうだ。
「俺はまだ竜王にはならねーぜ。先代竜王の言葉は守るつもりでいる。ただ、世話かけた親戚には挨拶をって思ってね……で、その紙を貸せ」
リー・ファンは財務表を見た。
「フールイ、そもそもこれらの武器どっから買った?」
「獣人族の国ナハルニヤです……」
「やれやれ」
フールイはもうひれ伏している。
「そもそも俺たちが支払遅れても吸血族のブルート国を渡らないとドラグリアに行けないはず。吸血族が獣人族の軍隊を横切るのをOKすると思うか?」
リー・ファンがシドンに聞く。
「断じてありえん」
シドンは即答した。
「つまりその時点で両国の領土を欲しがるわけだな。でも充てがないわけじゃないぜ」
「へ?」
フールイは少し驚いた。
「海魔族は島が多いから迎撃砲も欲しがると思うぜ。在庫処分という奴だな。じゃあ、俺は勇者御一行に加わるぜ。じゃあな」
「フールイはいつもあなた様をお待ちしております」
扉が閉まる。
「竜は気軽に遠くまで行けていいですな……」
シドンはその行動力に驚き、呆れた。
「奴は勝手気ままな奴です」
フールイは王子のわがままにうんざりしてた。




