~序~
海魔族の街ザギン。海魔族は海の上に家を建てる海上の民。陸上に住む獣人族とは親戚のため仲がいい。雨季は海魔族にとて最も活躍できる季節だ。場合によっては地上戦になっても不利にならない。
ドラグニアの西方にある港町。
この街にリー・ファンは居た。
冒険者ギルドに登録し、いざとなったら本性を現し時には人間と対峙したり、時には本性を現しロープで船をひっぱったりしていた。要は雑務だ。
そんな中いつもの居酒屋で声を掛けられた。海魔族でサハギンのコリンだ。
「おまえ、お触れが出てるぞ……」
コリンは尋ね人の紙を持っていた。似顔絵が、そっくりだった。
「コー・ファンとか偽名だよな? お前…ドラグニアの王子だったのか……」
リーは酒を飲み干しコップをどんとテーブルに叩く
「だから、なんだ!?」
「お前、身分も騙したな……。というかお前を捉えればこの国は人質を得られるというわけだ。金になるな?」
「「だれかこいつを捕まえろ」」
居酒屋の客が一斉に立ち上がる。
しかしリーは本性を現した。
居酒屋は滅茶苦茶になりさらに業火を浴びせる。
海魔族にとって火は弱点。次々竜が放つ業火によってリーは海魔族を葬むる
「こいつを半殺しにしろ」
「衛兵」
次々強い敵が集まってくる!! 衛兵も集まって来る! 獣人族も応戦に来る!!
氷の刃がリー・ファンに突き刺さる。悲鳴を上げながらリー・ファンは夜空を舞い、去って行く……。
(くそっ!母国が!!)
王子は涙を流した。雨で涙がかき消される。翼が重い。それは本当に雨だけのせいなのか……。
王子は高度を上げた。すると雨雲を突き抜ける。そこには青空が広がっていた。だが王子の涙は止まらない。王子はたまらず咆哮を上げ母国ドラグニアへと急降下した。
ドラグニアは雨が打ち付けるような雨だった。国民は敗北に……そしてこれから来る衝撃に恐怖していた。
(しょうがねえな)
泣いてる場合ではなかった。竜の姿を解いて王城に向かった。従者は王子が来たぞーと喚く。取り押さえられるのかと思ったがよくぞ御無事でという声ばかりだ。吸血族の四天王とともに国を再建してるという。向かわなければ。
リー・ファンは執務室へと向かった。




