第十二話
対空砲部隊を次々撃破していく。
城下はみな門を閉ざしていた。
城への跳ね橋をおろし、城内に突入する。
空からも突入する。
王はどこにいる!?
謁見の間に居ない。
「王が逃げたのでは」
「後ろの部屋にも居ない」
その時声が轟いた。
「いたぞー!!」
なんと地下牢のさらに下の階に王は居たのだ。
王が謁見の間に連れて来られる。
「これまでか。煮るなり焼くなり好きにするがいい」
その声に悪そうな笑みを浮かべる勇者。
「王、我々はこの国を占領したりましてや破壊するものではない。ただ元々人間の村だったヴリトラ村と漢方薬工場は頂きます」
ユーリルは答える。
「王、我々が求めるのは友好と平和。そして竜の血」
(そう、欲しいのは養分だけだ。いろんな意味でな)
「本当ににそれだけなのか」
「それ以外、何も求めない。賠償も求めない。隷属関係も求めない」
「なん……だと」
「だからこの悲劇を終わりにするんだ」
「そうか……」
「じゃがわしもけじめつけんとな。退位するよ」
「フールイ!」
「はっ!」
「今日からそなたが国王になってくれぬか」
「わ……わたしには畏れ多く……」
「大丈夫じゃ。基本部下や友好国となったブルート国の助言を聞くのじゃ」
「それと、勇者……」
「はい」
「愚息と共に旅をしてくれぬかの? 奴が一人前になったら竜王に継がせたいのじゃ。それまで側近のフールイが臨時竜王じゃ」
「わかりました。御触れを出してくれますか」
「当然じゃ」
「わしはもう疲れた……隠居するよ」
そう言うと白旗を掲げて城を後にする
「わが名はリー・フェン!!この戦は終わりじゃ!!」
この姿に竜族は悔しがる。双方の戦いは止まる。
「王、どこへ!?」
涙声の国民が尋ねる。閉ざされた扉から次々国民が、城下町の市民が飛び出す。
「さあ? わからん。とりあえず庵を建てて余生をまっとうするかの?」
白旗を掲げてそのまま去って行く……。
こうして竜族と吸血族の対立は終わったのであった。
この大地に雨季がやって来た。吸血鬼にとっては恵みの雨。竜族にとっては悲しみの涙となった。後にこの戦いを「竜涙の戦い」と呼ぶ。
<第二章 終>